みんなでつくろう

【こうべ・すまい楽校】今あるものに光をあてて、暮らしを楽しもう!


セミナーのご案内です!
締め切り迫っています!

【概要】
 近年、既存住宅を購入して自分たちの理想の住まいにリノベーションすることが人気となっています。ただ、「住宅を自分で選んで購入するのは不安。」「リノベーションしてみたいけど進め方がわからない。」などのお悩みはないでしょうか。

 本セミナーでは、住宅選びのポイントやリノベーションのしかたなどをご紹介するとともに、住まいに新しい付加価値を生み出す取り組みを行う不動産事業や、住まいからまちに視点を広げて、兵庫区運南地域に広がるものづくりコミュニティなど暮らしを楽しむ新たな動きについてもご紹介いたします。

 日時:11月10日(土)14:00~16:30『リノベーションのすすめ方講座』
    11月17日(土)14:00~16:30『リノベーション物件の見極め方講座』
    11月24日(土)13:00~16:00『ものづくり現場見学+トークイベント』
 主催:すまいるネット

 ※詳細は下記HPをご確認ください。
 ※参加希望者は、『11月3日(土)』までに
  (※11月10日、11月17日のセミナーについては、空き状況次第では締切り後も受け付けています。)
  電話、FAX、すまいるネットホームページからお申し込みください。

  (電話)078-222-0186(FAX)078-222-0106
  (HP)https://www.smilenet.kobe-sumai-machi.or.jp/event-list/3864/

△▼こちらからご覧ください▼△

リノベーションを通して見えてきた地域(ウズラボさん)/後編

前編の兵庫区の事例では土地の持つポテンシャルのお話がとても印象的だった。後編では、須磨区の焙煎所の事例に加え、他の地域でも参考になりそうな大阪の長屋の事例のお話を伺うことができた。また、ウズラボさんの建築設計、リノベーションについての考え方についても伺った。

●美容院から焙煎所へ

須磨区にある「明暮焙煎所」もウズラボさんが手がけた。「明暮焙煎所」はスペシャルティーコーヒーを取り扱う小さなコーヒー豆屋さん。元美容院だった物件をリノベーションした。

(「明暮焙煎所」の外観、紺色の外観は白を基調にした町並みにヴォイドをつくる)**
(「明暮焙煎所」の内観、既存の大きな開口部を活かして小さいながらも広がりのある空間)**

「コーヒーをこよなく愛する素敵なご夫婦がお店を切り盛りされています。販売している豆はすべて試飲でき、店主の説明はいつも丁寧で、すごく居心地の良い場所です。ドリップ講座も開催しており、ビギナーの方には特にオススメのお店です。豆の販売がメインですが、店主自らが目の前でドリップしたコーヒーを店内で飲むことができます。テイクアウトも可能なので、お店の近くにある妙法寺川公園を散歩する方はぜひ立ち寄ってもらいたいですね。
このお店はとても小さかったのでシンプルにまとめ、お客様との距離感を大切にできるように素朴な雰囲気にしました。傷んだ壁紙を剥がすと裏紙が案外きれいに残ったので、めくれすぎたところや汚れていたところをパテでしごくだけの仕上げにしました。内装で使っている木材は杉の荒木をそのまま使い、きれいになり過ぎないようにしています。このほうがリラックスできますし、緊張しない感じがご夫婦の人となりとフィットしています。
美容院は髪を整えてもらう間に交わされる会話を通じて情報交換がなされるコミュニティサロンです。焙煎所に姿を変えても、コミュニティサロンとしての場所性が引き継がれていることが興味深いと思いました。」

物件のサイズも小さく、コストを抑えた簡素なデザインだ。ここでは、自分に合ったコーヒーを選ぶ、飲む、知る、淹れ方を学ぶ、会話をする、そしてくつろぐという具合に、小さいながらも機能的で多様な使い方ができるようになっている。

●長屋の「使い方」をリノベーション

ウズラボさんは大阪の長屋物件のリノベーションも手がけている。木造密集地域に建つ昭和初期の長屋、須栄広長屋(すえひろながや/大阪市生野区)について伺った。現在では家族で暮らすには難しいイメージもある長屋。ウズラボさんは「若い人に使ってもらえるように」リノベーションを考えた。

「大阪市内でも戦災を免れた地域は戦前の長屋が残っています。須栄広長屋もそのひとつです。
多くの長屋は老朽化しています。いったん空き家になってしまうと、さらに深刻な状況に陥る場合が多いです。新たな住まい手が見つからず、何十年も空き家のままという長屋も少なくありません。夏は暑くて冬は寒い、設備は古くていつも暗い、という具合に、長屋にはマイナス面がいっぱいありますが、それも含めて楽しく住めるようにという考えで改修をおこないました。そうすることで、新たな若い住み手が既存のコミュニティにうまく溶け込んで、快適な住まいとして長屋を再生できると考えています。」

長屋は、隣と壁を共有しているとは言っても、玄関は別々なので庭付きの一軒家のようなもの。ワンルームマンションに住むより、はるかに豊かな暮らしができる。ゆったりとひとり暮らしをすることもできるし、友達と一緒に住んでもおもしろい。
そこでこの長屋では、若い人たちが何らかのつながりを持ちつつ住むことを想定して設計が行われたという。

(「須栄広長屋」の町並み、長屋が軒を連ねる地域が徐々に更新されていく)**

「第一期は、四軒長屋を一棟まるごと耐震改修したもので、大阪市立大学竹原・小池研究室が中心となって基本計画がおこなわれました。ウズラボは実務的な部分で協力しました。
塀から一歩中に入ったところにある前庭が内路地のようにつながれ、四軒でひとつのコミュニティが形成されるようなプランニングになっています。中央にある一軒にはみんなで集まれるような居間があり、オーナーさんも参加する歓送迎会がおこなわれたりします。絵に描いたように理想的な長屋暮らしが展開されています。」

(四軒長屋の内路地のような前庭(左)とコミュニティをつなぐ居間(右))*

第一期から2年が過ぎ、同じ並びにある別の長屋三棟にそれぞれ一軒ずつの空き家がでたことで、再び改修をおこなうことになった。この改修もウズラボさんと大阪市立大学小池研究室が協働で取り組んだ。

「第二期では、外部と内部の関係性をつなぐ存在としての軒先空間を積極的につくるようにしました。気候のいい季節には軒下空間で奥の庭を眺めながら読書をしたり、通りに開くような前庭でDIYをしてみたり、単なる住まいとしてだけではなく、長屋を存分に楽しめるように工夫しました。
また、第一期とは異なり、第二期はひとつの棟にまとまっていなかったため、前面道路を活用して点をつなぐような関係性にする必要がありました。前面道路と前庭をつなぎ、前庭と屋内をつなぎ、屋内と奥の庭をつなぐ。隣接する要素同士をつなぐことで、結果的に全体がゆるやかにつながるイメージです。
一期、二期ともに、リノベーション後は主に口コミで入居者が集まっています。新しく入居しても孤立することなく、既存のコミュニティにすんなりと溶け込むことができるという良い循環が生まれています。」

(居間の延長としての軒下空間(左)、町とつながる前庭(左))**

しっかりとコストもかけ、使い方をリノベーションした事例だと思う。建物の使い方を変え、若い世代が入ることで、エリアとして活性化を目指す。大阪に限らず、神戸や他の地域でも参考になるのではないだろうか。

●今あるものを組み合わせていく

最後にウズラボさんの建築設計、リノベーションについての考えを伺った。

「建築の設計では、土地やクライアントも含め、それぞれの条件をどう読み解いていくのかということが重要だと考えています。特にリノベーションの場合、建物の歴史や地域とのつながりといった条件とも深く関わってくるので、建築はもちろんのこと、人や事についても真摯に向き合う必要があります。
ここ数年は、神戸、大阪、京都という3つの地域でリノベーション物件に取り組んできました。
神戸ではコーヒー豆屋さん、大阪では長屋、京都では公共の美術館という具合に、規模も用途もさまざまで、その場所、その場所で特有の条件があります。そのなかで共通して大切にしてきたのは、それぞれの建築が経てきた歴史の積み重ねを踏まえ、その上に将来的に必要な要素を必要な分だけ少しずつ更新していくということです。その過程で、クライアントと住まい手、地域の人同士がつながり、それぞれの立場、それぞれの職能が協力し合うことが大切です。
今あるものを組み合わせていくことで、これまでになかった新しい組み合わせができて、新たなフェーズが見えてくるとワクワクします。今ある持ち駒の組み合わせ方を変えることで新しい攻め方ができるようになる。そんな作り方ができるとみんな楽しく建築に関わってもらえるのかなと思っています。」

今あるものを組み合わせる。理解しているつもりでも忘れがちなことだと思う。意外と足元にヒントが転がっていたりする。

●取材を終えて

リノベーションを考える中で、その地域の特性が見えてくるというタケウチさん。特に兵庫区のつながりのお話は興味深かった。自分は知らないけれど、親同士は知人、友人だったりすることはよくある。それがつながっていくことで、エリアとしてのバックグラウンドが浮かび上がってくる…そういった地域はまだまだあるのではないかと思う。リノベーションをする際に、物件だけを見るのではなく、エリアを見て、その歴史まで視野を広げると面白いことがまだまだあるような気がした。

※記事内の文章は原文を尊重しています。

竹内 正明(たけうち・まさあき)
ウズラボ代表
○PLOFILE
1973年大阪府生まれ
2002年に小池志保子とともにウズラボを共同設立、
2006年より代表
住まいに関するさまざまな事柄をデザインするとと
もに、文章の執筆や講演、大学教育に携わるなど、
建築を通じて幅広い活動をおこなっている。


○画像提供(*梅田彩華/**多田ユウコ/***ウズラボ/みんなでつくろう編集部)

リノベーションを通して見えてきた地域(ウズラボさん)/前編

関西を中心に建築設計に携わっている建築事務所「ウズラボ」(兵庫区)。代表のタケウチさんにお話を聞いた。市内の事例から浮かび上がってきた関係性や、大阪などの事例を含めたリノベーションの考え方をたっぷり話していただけた。前編・後編の2本立てでお届けする。

●倉庫物件をフルリノベーションし、現代的な空間へ

兵庫区はもともと木材の輸入や造船関係の鉄鋼業で町工場が栄えた背景があるエリア。現在そういった事業は衰退し、使われなくなった工場や倉庫が増えてきている。
今回お話ををうかがった「MATSUMOTO COFFEE warehouse」は、いわゆる一般的な倉庫物件をフルリノベーションし、現代的な倉庫兼店舗へと生まれ変わった。

(「MATSUMOTO COFFEE warehouse」外観、紺色の外壁がリズミカルな開口部を際立たせる)**
(改修前の外観、畳屋の倉庫だった(左))*** (ほぼスケルトンの施工前、既存壁材のOSBをそのまま流用したところも多い(右))***

「床や天板など、一部の塗装はマツモトコーヒーさんがDIYで仕上げています。OSBの壁材はもともとあった既存の仕上げです。コストを下げるために既存の壁材を使いつつ、新しい素材をあてがうことで全体的に自然な感じで仕上げ、空間を整えました。マツモトコーヒーさんは、新たな事業展開をおこなうにあたって、コーヒー豆を輸入して出荷するまでの工程・管理をお客様にしっかり見せたいという明確なビジョンをお持ちでした。そのビジョンを建築として表現するために、大きな空間はそのままに、柱や垂れ壁を使うことでゾーンに分けつつも一望できるように空間を整理整頓しました。」

「階段の踊場や一部のカウンターで六甲山の間伐材を使用しています」とのことだった。さらに詳しく聞いていくとこのエリアならではのお話を聞くことができた。

(階段の踊場や一部のカウンター材は六甲山の間伐材を使っている)**

●木材を使うことから浮かび上がってきた関係性

ウズラボさんの建築設計で木材を多く使っている印象があったので、理由を伺うと「木材を使うということに対して最初からポリシーやビジョンが明確にあったわけではないです」と話すタケウチさん。むしろ、木材を使うきっかけは「たまたま」だったという。しかし、そこから地域の関係性が浮かび上がってくることに。
「もともと身内が兵庫区で木材の加工業を営んでおり、いろいろな事情でそのすぐ近所に事務所を構えることになりました。木材を使った仕事をしている町工場が多くあったところなので、近所には材木屋さんもありました。事務所の内装を考えているとき、売り物にならなくなったデッドストック材を材木屋さんから安く分けてもらうことができれば大幅にコストを下げることができるのではないかと思い、実践しました。

また、身内が木材加工業なので木材に関する相談がしやすく、幅や厚みが違う材料でも簡単に美しく仕上げる加工を施してもらいました。いろいろな形状に材を加工できなければ、何を作っても精度が上がらず、せいぜい日曜大工レベルにしかなりません。でも町工場の木材加工レベルは非常に高いので、きちんとした加工を依頼すれば、どんな材でも精度の高い納まりが可能となります。商品化できるレベルの仕上がりです。兵庫区に住むようになって自分がとても恵まれた環境にいると気づきました。そこから、木材を使うということを強く意識し始め、いろいろな可能性が広がりました。」

(ウズラボオフィスの壁面、デッドストックの無垢材に特殊なサネ加工を施している)*
(無垢材を加工したオリジナル壁材(左)*や取手(右)***)

「最近では、シェアウッズの山崎正夫さんがマルナカ工作所(兵庫区)の運営を始めました。木材に関する相談は以前からしていたのですが、グッと距離が近くなりました。彼は六甲山の間伐材の活用にも取り組んでいるのですが、山から下ろしてきた原木は兵庫区内にある三栄株式会社で製材しています。三栄さんには「MATSUMOTO COFFEE warehouse」で使用する材を入れる際にもたくさんご協力いただきました。三栄さんの隣には北欧の家具と雑貨のお店「北の椅子と」さんがあるのですが、そこのカフェはいつ行っても知り合いに会う、この地域のコミュニティスポットになっています。「MATSUMOTO COFFEE warehouse」では、「北の椅子と」さんで選んだ椅子とサイドテーブルが使われています。近所の小さなエリアの中で木を使うプラットフォームが揃っていて、それぞれの特性がうまく機能したという感じです。

こういった繋がりは、仕事だけではなく、プライベートでも複雑に絡み合っています。小学校のときの同級生だったり、子どもの保育園が一緒だったり、近所のスーパーに行けば出会ったり。限定されたエリアだからこそ生まれる、付かず離れずの関係性によって程よい緊張感と連帯感が形成されています。」

かつて材木業が栄えた地域だからこそのつながり。ただ、そういった町工場も現在は衰退、減少している。「せっかくの技術がこのまま無くなるのはもったいない。何かいい方法はないものかと模索している」とタケウチさんはいう。

(阪神高速の高架と国道2号線に面した場所に建つ「MATSUMOTO COFFEE warehouse」)**
(高圧木毛セメント板にクリア塗装仕上げの壁面で囲まれた改修後の内装)**

●近所には木材だけじゃなく鉄もあった

(近所の鉄工所で溶接してもらった曲げ加工した鉄パイプ)
(マンションのリノベーション物件でハンガー掛けとして設置)***

お話を聞いていくと、近所には鉄工所もあるという。別のリノベーションで使用した鉄パイプの造作を見せてもらった。
「鉄の造作も木材と同じように近所の鉄工所で加工してもらっています。先日、鉄のパイプを曲げて溶接してもらおうと思って相談に行きました。でも、パイプの曲げ加工は別の町工場でないとできないと言われました。仕様を考え直さないといけないのかなと思ったところ、そのパイプ屋が近所にあるということで、すぐに車で連れて行ってくれました。それぞれの町工場に得意分野があって、できないことは地域でフォローする。そんな関係性が鉄の加工でも構築されていることに気づかされました。これまでは木材を中心に地の利を活かしてきたけれど、鉄も絡ませることができればもっと可能性が広がると思いました。」

兵庫区、長田区は木材ばかりでなく、造船、鉄鋼業が栄えた地域。そのポテンシャルの高さが伺えるエピソードだ。

(後編へつづく)
※記事内の文章は原文を尊重しています。

竹内 正明(たけうち・まさあき)
ウズラボ代表
○PLOFILE
1973年大阪府生まれ
2002年に小池志保子とともにウズラボを共同設立、
2006年より代表
住まいに関するさまざまな事柄をデザインするとと
もに、文章の執筆や講演、大学教育に携わるなど、
建築を通じて幅広い活動をおこなっている。


○画像提供(*梅田彩華/**多田ユウコ/***ウズラボ/みんなでつくろう編集部)

リノベガイドvol.10 見積書の内容について

このリノベガイドも最終回になります。今回は見積もりの内容についてです。見積書には建築工事の難しい専門用語や内容がありますが、押さえるポイントは多くありません。実際の見積書を参考に、見るときのコツを説明していきますので覚えておきましょう。また、工事の種類や内容を簡単にでも理解しておくことで、設計事務所や工務店との交渉や相談もよりスムーズになります。

見積書を見るときのコツ

設計事務所や工務店などから上がってくる見積書には各工事の種類、購入する設備、費用などが記載されています。金額が気になると思いますが、まずは基本的なポイントとして、下記の項目をチェックしましょう。

・作成年月日の記載があるか、押印されているか
見積書を出してもらってから、相談し、修正してもらうこともよくあります。見積書の数が増えてきた時に、間違いのないように作成年月日を確認しましょう。そして見積金額の有効期限や押印の有無も合わせてチェックしておきましょう。

(見積書サンプル/作成年月日、押印があるかどうかをチェックしましょう。)

・単価の記載があるか
使用する資材や購入する設備、作業費(人工)などそれぞれの項目に単価が記載されているか確認しましょう。もし単価の記載がなかったり、他社の見積もりと大きく違う場合がある場合などは確認してみましょう。

(見積書サンプル/使用資材の単価が記載されています。)

・型番の記載があるか
購入する設備や部材の商品名、メーカー型番まで記載されているかを確認しましょう。見積書の価格には発注手間や受取、送料なども含まれていることがほとんどですので、インターネットなどで調べた際に金額が大きく違う場合は確認してみてもよいかもしれません。

(見積書サンプル/使用設備の型番、価格が記載されています。)

基本的なポイントのほかに、工事内容や気になることがあれば担当者にどんどん確認していきましょう!

材工一式とは

専門業者からの見積書に「材工一式(ざいこういっしき)」「材工共(ざいこうとも)」などと記載されることがあります。これは、「材料費」+「施工費」を意味しています。
材工一式と記載されていて、内訳などに資材の品名や型番の記載が無い場合はしっかりと確認しておきましょう。資材の販売価格が分かれば、一式となっている総額からおおよその施工費を計算することができます。もし大きな価格差があるようなら、一度確認してもらうと良いでしょう。

工事の種類

見積書に記載される工事の種類は大きく下記のカテゴリーに分かれます(例えば仮設工事、土木工事、設備工事など)。それぞれの費用の特徴を押さえておきましょう。

1.仮設工事
工事を安全に施工するための足場やシート、仮設電気、仮設水道、仮設トイレの設置、清掃や片付けなど完成後に形として残らない工事のことです。費用として計上されるのは、足場費と養生(工事で傷がつかないようにシート等で保護する)費が多いです。

(仮設工事の様子)

2.解体工事
既存の建築物の取り壊し、撤去する工事のことです。建物の構造や部分、規模によりますが、建具をはずしたり、瓦を下ろしたり、柱や梁を分解したりと多岐に渡ります。費用は構造や広さ、内容により変動します。

3.建築工事
建築物を建てる工事になりますが、その種類は様々です。一般的に土木工事・左官工事・塗装工事・タイル工事・ガラス工事・内装工事・雑工事などがあり、それぞれの専門業者が施工します。費用も工事内容により変動します。

(左/左官工事 右/木工事)

4.設備工事
建築物の設備の工事になります。主に電気設備工事・給排水工事・ガス設備工事・衛生設備機器工事・空調設備工事などがあります。費用は主に材料費と工賃が計上されます。

5.家具工事
建具や造作家具にかかる工事になります。費用は発注する内容や材料、家具・大工職人のコストにより変動します。

6.諸経費
諸経費は現場経費(現場監督・管理費)と交通費が主になりますが、工務店によって様々です。不明点があれば都度確認してみるとよいでしょう。

見積書は実際にかかるコストになります。また、工事が始まってから変更や修正が出てきて、金額が上下する場合もありますので慎重にコスト管理をしながら進めていきましょう。少しでも気になることが出てきたら担当者に確認をしていくとよいでしょう。すまいるネットでも見積書を持参すれば、具体的な見方をアドバイスしてくれます。

振り返り(リノベーションをもっと身近に)

今回で全10回のリノベガイドも終わります。リノベーションが思っていた以上に簡単だ!今度やってみよう!と感じてもらえたら幸いです。

住居のリノベーションと聞くと大掛かりなイメージもありますが、例えば壁の色を変えたり、床を張り替えることは気軽にできますし、自分好みになることで愛着もグッと湧いてきます。


また、天井を取り、むき出しにすれば、開放感が出て、中古物件ならではの年月を経た構造(コンクリート、梁や柱など)が魅力的になることも多くあります。


住居の構造の仕組みが分かればBIG1LDKにしてみたり、子供の成長やライフスタイルに合わせて部屋を増やしたりすることもできます。

キッチン、浴室などの水回りは設備や配管にコストがかかる部分になりますが、ポイントを押さえて専門家と一緒に取り組むことで自由に作ることができます。内装では、電源スイッチや部屋の照明にこだわるだけでも印象は大きく変わります。

部分ごとに様々な工事が必要になり、DIYでできることも多いですが、専門家に依頼することも大切です。設計事務所や工務店への依頼や、見積もりをはじめとしたコスト管理もしっかり行いましょう。

リノベーションの何よりのメリットは、住む人が使いやすいように作っていけることです。結果的にそれぞれの個性、ライフスタイルが反映された住居になり、魅力も増してくるのだと思います。

現在、全国的に空き家増加問題が深刻化してきています。「既存の住居を活かして自分好みにリノベーションする」という視点から見ると、自分好みの素材(建物)を選ぶ選択肢が増えてくることになります。新築物件を探すことはもちろん、リノベーションを前提として中古物件を探すのも楽しいかもしれません。

専門家の力も借りながら、楽しく自分の住居を作りましょう!
さぁ!レッツリノベーション!

(リノベーション例/中古物件を購入してリノベーションをしよう!)

イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部

リノベガイドvol.9 リノベーションを専門業者に任せる

前回までは、リノベーションの部分ごとの作業工程やポイントを説明をしてきました。それぞれのポイントを理解することで、大体のことがDIYでできたりします。そのかわり、時間がかかったり技術的に難しい部分や、資格が必要な作業も多くあります。その場合は無理をせず専門業者へ依頼することをおすすめします。

専門業者へ依頼するメリットは、施工の技術力、工期の短縮、職人のスケジュール管理など多くあります。一方のデメリットは、コストが高くなってしまう点や自分のイメージの仕上がりを理解して、施工してもらえるかどうかなどです。

(専門業者にしかできないことも多くあります。

予算、スケジュール、仕上がりなどのバランスを取りながら工事を進めていくためにも、専門業者の役割や見積もりのこともしっかり考えておきましょう。

誰に任せるのか?(専門業者の種類)

そもそも建築に関わる専門業者とはどんな種類があるのでしょうか。部分ごとの場合は、地盤の土工事、基礎工事、土台・柱・梁・筋交いなどの躯体、床組などの木工事、屋根工事、内装工事、設備工事などがあり、工事の進捗に合わせて担当が変わっていきます。

それぞれの業者に工事の依頼していくことは大変ですし(ほとんどの場合個人では発注できない)、一般的には設計事務所か工務店のどちらかに任せることになります。

設計事務所の特徴は意匠にこだわれることです。自分の希望を反映した設計、仕上がりが期待できますが、その分コストが高くなることもあります。
工務店の特徴は現場のスペシャリストが窓口に立って、工事管理を行うことです。意匠に強いわけではないため、無難な仕上がりになることが多いです。
ただ、近年は両者の定義も曖昧になってきており、それぞれ得意なポイントが違いますので、依頼する前に調べておくとよいでしょう。

両者とも各業者や職人と連携し、図面に基づいて工事を進めていきます。監督やマネージメントの役割のようなイメージです。工事全体の管理と見積もり管理も任せることができるので、依頼する側は窓口になる人とコミュニケーションをしっかりするだけで、おまかせすることになります。

見積もりは安くなるのか?

設計事務所や工務店に工事を依頼する場合は、まず物件の概要や、希望する工事内容・スケジュールを相談し、実際にかかる費用の見積もりを出してもらうことから始まります。複数の業者から出してもらうと、比較が出来るのでおすすめです。そこで工期や使用する資材、人工(にんく/専門職の人が、1日に働く作業量の単位)などを含めたおおよその金額がわかります。

見積りの金額は自分でDIYをするよりも高額になってしまうことがほとんどです。交渉して安くしてもらうことも大切ですが、基本的に「資材費」と「人工(にんく)」は安くなりません。それでもコストダウンをしたい場合は下記のような方法もあります。

○「資材費」を抑えたい場合
・設備機器の商品選定で安いものを選ぶ
・施主支給にする(自分で購入する)

○「人工」のコストを抑えたい場合
・施工方法を単純化する
例えば、「浴室の在来工法ではなく、ユニットバスに変更する。」「キッチンをオーダーシステムではなく、システムキッチンに変更する。」などがあります。

単純にコスト優先で設備や施工方法を安い方法に切り替えると、仕上がりが安っぽくなってしまったり、自分のイメージと違ってきてしまうことになりますので注意が必要です。また、無理な交渉をした結果、施工不良などの大きなトラブルにならないように気をつけましょう。

自分が工務店になるという考え方

(自分で床を貼る)

他に予算を少しでも抑える方法として、工務店の役割を自分で行うという考え方があります。例えば、床貼りなどの小規模な工事の場合は、職人に相談して施工方法やコツなどレクチャーしてもらい、床貼りの作業は自分自身で行うこともできます。また、壁塗りなどのDIYワークショップに参加することも勉強になるのではないでしょうか。

自分自身でDIYをしていくと、どうしても時間や手間がかかってしまいます。作業の内容によりますが、一人の作業が大変な場合はご家族や友人・知人たちと一緒に楽しみながら作業をするのもおすすめです。

(友人・知人と一緒にやれば楽しいうえ、スピードも上がります。)

DIYの場合は失敗も付き物ですが、その分愛着も湧きます。また、補修や変更したい場合も作業経験があることで、自分で修理・補修できるようになるのが大きなメリットではないでしょうか。(もちろん難しい場合は専門家へ相談・依頼しましょう。)

(壁の塗装や床を貼る作業はチャレンジしやすいです。)


いかがでしたでしょうか?
次回、最終回のvol.10では見積もりの内容について説明します。お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部

リノベガイドvol.8 電気と配線のこと


今回は電気のことです。私たちの生活の中で電気はなくてはならないものです。主に発電所で作られた電気は、変電所や電柱・電線を通して私たちの家庭まで届いています。最終地点である物件(戸建やマンション)には分電盤という、電気を安全に使用するために必要な漏電遮断器(漏電ブレーカー)や配線用遮断器(安全ブレーカー)を1つにまとめた箱がついています。普段、分電盤を触ることは少ないですが、過去にブレーカーが落ちた経験がある人はそれなりにいるのではないでしょうか。

古い住宅は電気の容量が小さいことも多いため、事前に分電盤や電気のことを知っておくと、スムーズに対応ができます。また、天井や壁を取り払ったり、水回りなどを変更したりすると、今まで天井裏や壁の中に隠れていた電気の配線が出てきます。その配線をどうするかも、イメージ通りに仕上げるための大切なポイントになります。

電気の配線と同様に、照明器具の選択も仕上がりに大きく影響しますので、代表的な照明器具のタイプは覚えておくようにしましょう。その他に、クーラーやレンジを設置する時のポイントなどもしっかり押さえておきましょう。

分電盤について(引き込みアンペアを確認しておこう!)

分電盤を見ると引き込まれているアンペア数(電流の量)を確認することができます(分からない時は契約電気会社に確認しましょう)。契約しているアンペアの数値(30Aや40Aなど)が、電気機器を同時に使える最大の電気量になります。この数値をオーバーするとブレーカーが落ちます。頻繁にブレーカーが落ちる人は、同時に使用する電気製品を減らしてみたり、使用アンペアの少ない機器に交換すると良いでしょう。改善しない場合は契約している電気会社へ連絡して、契約アンペアの見直しをしてみましょう。

電圧のこと(100Vと200Vの違い)

電気のことを知っていくと、アンペアとは別にV(ボルト)という言葉もよく出てきます。これは電圧を意味しています。電圧が大きければ電気の量も多くなり、パワフルな機器が使用できます。一般家庭用の電気製品は主に100Vですが、業務用の機器やエアコンや床暖房、レンジなど200Vの製品もあります。
一般的な物件の中にあるコンセントは100Vが基本です。100Vのコンセントでは200Vの電気製品を使えません。ただ最近の物件は200V用のコンセントが付いていることが増えてきました。200V用のコンセントがない場合も電気工事を依頼すれば、切り替えや増設が可能です。

配線について

リノベーションの工程で出てきた電気の配線を隠すのか?見せるのか?見せる場合はどうするのか?なども大切なポイントです。全体のイメージに統一感が出るように、早い段階である程度決めてから工事を進めるとよいでしょう。

・露出するならモール?鉄管?
配線を露出させる場合、一般的にはモールに入れて壁に貼り付ける方法が多く、コストも安くすみます。さらに施工後にペイントするとより目立たなくなります。よりこだわりたい場合は、例えば鉄管の中に全ての配線を入れて、壁や天井に這わせる方法があります。こちらはコストもかかりますが、インダストリアルな雰囲気を演出することができます。
その他にも様々な配線の隠し方や活かし方があります。身近なお店や専門のウェブサイト、雑誌などいろいろ参考にしてみると良いでしょう。

照明器具あれこれ

(ライティングレールを使用した照明例)

・ライティングレール(ダクトレール)と引掛シーリングの違い
ライティングレール(ダクトレール)とは、照明をレールの上の好きな位置に取り付けできるパーツです。もともとは店舗用などで普及していましたが、最近は家庭用の簡易取付タイプも増え、一般的になりました。メリットは照明器具を自由な位置に取付可能で、明るさの調節や交換も簡単なことです。また、天井がすっきりして見た目が良くなることも人気の理由です。一方、デメリットとして、配線が丸見えになるため、配線の見え方、見せ方に注意が必要です。天井や壁にライティングレールを埋め込む方法もありますが、コストもかかるため予算管理が必要になります。

引掛シーリングは天井に取付、照明器具を固定する電源ソケットのことです。築年数の古い戸建てやマンションなどに多く普及しています。対応している照明器具も多く、価格も様々で選択肢が豊富です。デメリットとして、固定位置にしか照明器具を取り付けることができません。例えば部屋のレイアウト変更をして、照明位置を変えたい場合などは専門業者に依頼することになります。

・その他の照明器具(ブラケット / ダウンライト など)

(左:ブラケット照明/壁に直接取り付けるのが特徴 右:ダウンライト)

その他の照明器具として、主に「ブラケット」「ダウンライト」などがあります。ブラケットは壁に直接取り付ける照明器具です。リビングや吹き抜けの補助照明が必要な空間や廊下、階段、玄関ドア付近や勝手口等に用いられることが多いです。また個性的な演出もできるため、店舗などにも使われます。 ブラケットライトは器具本体のデザインも豊富です。

壁から出っ張って取り付けるので、人に当たって邪魔にならないように高さに気を付ける必要があります。また、取り付け位置や壁との距離によって光の当たり方や見え方が変わってきますので事前にしっかりと計画を立てましょう。

(ブラケット照明/浴室にも使うことができます。)

ダウンライトは、天井に埋め込んで取り付ける照明器具のうち、小型のものになります。天井に埋め込んで設置するため天井面がフラットになるという特徴があります。 商業施設や病院などでよく見かけます。スポットライトとしての演出や、メインの照明の補助的な役割として使われることが多いのが特徴です。

・電球タイプあれこれ(LED / 蛍光灯 / 白熱灯)
電球のタイプは主にLED、蛍光灯、白熱灯の3種類が選択肢としてあります。これからもLEDが選択肢のメインになると思いますので、従来の電球と合わせて特徴を覚えておきましょう。

スイッチやコンセントについて

(左/トグルスイッチ 右/アメリカンスイッチ)

電気のスイッチやコンセントは毎日使うものです。部屋のアクセントにもなりますので、こだわってみても良いのではないでしょうか。一般的な電気のオンオフスイッチもトグルスイッチやアメリカンスイッチをはじめ、アンティークやセンサー付きのものなど様々なタイプがあります。小さな部分ですが、作りたい部屋のイメージに合わせて選択するとグッと雰囲気が良くなります。また、新たにコンセントを設置や移動する場合、部屋の用途や電気機器の特徴にあわせて、設置位置を計画するようにしましょう。例えば、キッチンなどで立って使用する機器のコンセントは高さ120cm〜140cmあたりが使い勝手が良かったりします。

エアコンを設置するなら

・専用回路にしましょう
エアコン(電子レンジなども)などの消費電力の多い電気製品は専用回路にしましょう。専用回路にしないと負荷がかかり、ブレーカーが頻繁に落ちたりします。専用回線の増設は資格が必要になりますので、専門業者に依頼するようにしましょう。

エアコンを設置する場合は電源の他に、大きく2種類の配管が必要になります。一つは冷媒管、もう一つはドレン管と言います。冷媒管は室外の空調機と繋がり、ドレン管はエアコンから出る水分の排水の役割になります。特にドレン管は水が流れていくので、個人で配管をしていく場合には必ず勾配を付けるようにしましょう。難しい場合は無理をせず、専門業者に依頼しましょう。


いかがでしたでしょうか?
天井や壁などを工事すると、必ず電気の配線や配管の処理もセットで考えなくてはいけません。しっかりポイントを押さえておきましょう。
次回vol9は「業者への見積もりの仕方」です!お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部

「空き家の価値を考える」 神戸+大阪+京都三都連携事業シンポジウム開催

平成30年2月17日(土曜)に、神戸市、大阪市、京都市の三都連携事業シンポジウムが神戸市勤労会館にて開催されます。
神戸は、須磨区禅昌寺町でのシェアハウス、大阪は、大正区の長屋のオープンハウスイベント、京都は、六原まちづくり委員会の取り組みの紹介など、ちょっと違った角度で空き家にアプローチされている方たちの話をお伺いします。パネルディスカッションもありますので、ぜひご参加ください!
詳しくは、こちらまで。

リノベガイドvol.7 水回りのこと その2

前回に引き続き、水回りについての説明になります。今回は水回り設備の風呂、トイレの説明していきます。

風呂について

中古物件の風呂は、小さな浴槽や古い湯沸かし器のままだったり、タイルがひび割れて、カビが生えていたりといった状態も多くあります。使いにくいため、一新したいと思う人も多いのではないでしょうか。風呂の工法やコストのことを知っておくと選択肢も増えると思います。

(在来工法で一新した浴室例 / ブロックやタイルをはじめ、シャワーや蛇口までこだわれるのがメリット。)

●在来工法、ユニットバスの違い
現在、風呂の種類(工法)はユニットバスタイプが主流になってきました。ユニットバスは浴室(天井と床)と浴槽が一体となっていて、防水性が高く、施工も簡易なのでマンションなどに多く使われています。コツを押さえるとセルフビルドも可能です。ユニットバスが普及するまでは在来工法という、下地で防水した浴室を作り、タイルを貼り、浴槽を埋め込む方法が主流でした。ユニットバスではできない、自由なデザインができるのが特徴です。

(一般的な浴室例 / 左が在来工法、右がユニットバス)

●風呂の変更について
ユニットバスへの変更はあらかじめ組み立てられたものをはめ込む作業がメインになります。そのため工期が短く人手も少なくてすみ、コストメリットが大きいことが特徴です。配管も決められた位置に準備すればよいだけです。デメリットとして、サイズが決められているので、適切な設置スペースがない場合は別の工事が必要になりコストがかかることもあります。

(ユニットバスの施工例 / 画像はシャワータイプのユニットバス、決めた位置にはめ込み、配管をつなぐだけ)

在来工法の場合は、下地やタイル貼りなど、それぞれ専門家に依頼したり、使った材料を乾かす時間が必要だったりと工期やコストがかかります。自由に作れることが大きなメリットですが、設置場所への配管の調整も必要になります。完成後も水漏れや腐食を防ぐため定期的なメンテナンスも大切です。それぞれのメリット、デメリットを押さえて工法を選択しましょう。

トイレについて

昔は暗くて狭いイメージの場所だったトイレですが、便器もほとんどが和式から洋式になり、最近ではリラックスできる場所という考え方が広まってきました。スペースに余裕があれば手洗い場と一緒にしたり、壁紙や床材にこだわったりできます。トイレはもともとのスペースが狭い場合が多く、改装にコストを抑えられることもポイントです。

(小さなスペースで自分好みに作りやすい)

●トイレの排水形式について
トイレの便器を変更する際に押さえておくポイントとして、排水形式があります。便器の排水方式は汚物を床方向に流す「床排水」と、壁方向に流す「壁排水」の2種類があります。
「床排水」は主に一戸建て・マンションに多く、「壁排水」は団地に多いです。簡単な確認方法は便器の後ろから壁に向かって排水管が出ているかをチェックしましょう。(排水管が目視できない場合は床排水の場合もあります。)自宅のトイレが床排水の場合は、同じ床排水タイプの便器でなければ設置ができないため、必ず事前に確認しましょう。

●和式トイレを洋式トイレにする場合
古い戸建などで和式トイレから洋式トイレに変更する場合の大まかな流れを説明します。
和式トイレは床材に埋め込まれていることがほとんどなので、まずは床下の解体を行い、便器を外します。その後、配管位置を確認して新しい便器の配管位置に調整をします。そして床下地を作り直して、洋式の便器を設置します。DIYなども可能ですが、時間や手間もかかりますので、専門業者に依頼するとよいでしょう。

(昔ながらの和式便器 / 交換するには床下の解体からはじめる。)

プロに任せましょう
風呂やトイレの変更もポイントを押さえればDIYも可能ですが、配管の調整や、施工後の漏水など、ミスが起こると本当に大変です。特にマンション・団地物件では上下階の住民にも迷惑をかけてしまうこともありますので、配管工事は必ず専門業者に依頼するようにしましょう。


いかがでしたでしょうか?2回にわたって水回り設備やPSの説明をしてきました。各設備については種類や、工法のメリットデメリットも考えて選んでいくようにしましょう。
次回vol8は「電気のこと」です!お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
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リノベガイドvol.6 水回りのこと その1


今回のvol.6と次回vol.7は水回りの説明をしていきます。まずは水回り設備の中でもメインとなるキッチンの現状や種類などの説明と、PS(パイプスペース)の考え方になります。次回は風呂やトイレの構造とレイアウト変更をする場合のポイントについて説明をしていきます。

中古物件を購入したり、実家から戸建を引き継いだりした場合、水回り設備や間取りが今の暮らしにフィットしていないことも多くあります。リノベーションで水回りの問題も解決して、暮らしやすくしていきましょう。

キッチンについて

●台所からキッチンへ
昔は主に「台所」と呼ばれていて、料理をするだけの場所という考えでした。台所の位置も日が当たりにくい北側の壁際などが多かったようです(冷蔵庫が普及していない時代に食品の保存に適していた為)。
今では「キッチン」と呼ぶようになり、料理をする場所だけではなく、家族が一緒にいる場所という考えになってきました。そのため築浅の物件などは部屋の間取り図を見ても、「DK=ダイニングキッチン」や「LDK=リビングダイニングキッチン」のように部屋とキッチンが一緒になっている間取りがほとんどです。

●キッチンのタイプ

(オーダーキッチンとオープンキッチンの例)

キッチンのタイプは大きく「システムキッチン」と「オーダーキッチン」に分けられます。システムキッチンは複数のユニットを並べて配置し、シンク付きのワークトップ(天板)で連結して一体化したものです。調理用機器などもビルトインできることで見た目もすっきりし、広いワークトップで作業がしやすいメリットがあります。
オーダーキッチンは文字どおり、自由に作っていくタイプです。レイアウトや装飾などを好みに仕上げることができますが、コストが高くなりやすいことも覚えておきましょう。

●オープンキッチンとセミオープンキッチン
家族と一緒にいる場所としてのキッチンも大きく2種類の型があります。ひとつは「オープンキッチン」、もう一つは「セミオープンキッチン」です。
オープンキッチンは壁に仕切られておらず、リビングやダイニングと繋がっていてとても開放感があります。家族とのコミュニケーションも取りやすいうえ、部屋の窓からの景色を眺めながら料理ができたりと良い面が多いです。ただ、気をつけるポイントとして、レンジフード(換気扇)の性能によって、料理の臭いが部屋にこもってしまう可能性があります。またリビングやダイニングと一緒になっているので、キッチンも含めたインテリアとして見せることを考えると、調理器具や食材の収納をしっかり考えておく必要があります。
セミオープンキッチンはキッチンの前面にカウンターや壁があり、料理中に散らかりやすい調理器具や調味料など隠すことができます。吊戸棚などがあるカウンターキッチンなどは収納も難しくありません。ある程度独立した空間があるので、コミュニケーションも取りつつ、料理に集中できるのがメリットです。

キッチンのレイアウトも、間取りに合わせていろいろあります。代表的なものは「アイランド型」(キッチンの一部または全部が島のように独立している。)「ペニンシュラ型」(キッチンの一部が半島のように壁についている。)「Ⅰ型」「L型」などがあります。

アイランド型:開放的、大勢での使用に向いているが目立つ位置にあるため片付けやすい工夫が必要。
ペニンシュラ型:作業台の面積が大きく、動線も短く作業しやすいがスペースも必要になる。
I型:シンプルで場所を取らない。最も一般的。
L型:キッチンの動線が短く、使いやすいがコーナー部分の収納は使いづらい。

キッチンを一新する場合は、使う人の希望はもちろんのこと、部屋の一部としての見え方、そして家族とのコミュニケーションのあり方も考えながら選択していくと良いのではないでしょうか。

●自作もできる!?
キッチンは各種メーカーからたくさんの種類が販売されていて選択肢も豊富です。キッチンを自分で作るのは大変そうなイメージもありますが、配管を専門業者に依頼する部分以外はそこまでハードルは高くありません。そして、使う人の背の高さに合わせてキッチンの高さも合わせることができるのは大きな魅力です。例えば使いやすい高さの木枠を作って、お気に入りのシンクをはめるだけでも十分です。または店舗用の厨房機器を中古で購入して並べるだけでもOKです。既製品では物足りない、またはもっとこだわりたい、コストを抑えたいという方はチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

(自作キッチンの例 / 木枠を作って、シンクやコンロをはめ込んでいる)

(自作キッチンの例 / 中古の厨房機器を並べるだけでインダストリーな雰囲気に)

PS(パイプスペース)の考え方

キッチンをはじめ、風呂やトイレなどの水回りのレイアウト変更を考えるときに基本になってくるのがPS(パイプスペース)です。水回り設備を移動するときは必ずPSのことから考え始ることになりますので、まずはPSのことをしっかり理解しましょう。

●PS(パイプスペース)とは?どこにあるの?
PSと言われても建築関係の知識がない方は「?」になると思います。PSは上下階に給排水を通す配管やガス管を収納しているスペースのことです。
浴槽やキッチン器具、トイレといった水回り設備を配置するためには必ず配管が必要になります。その際もPSの位置から配管していくため、物件の間取り図面などでPSの位置はしっかり押さえておきましょう。

(パイプスペースの位置例)

中古物件のマンション・団地のPSは主に既存の水廻り設備が集まっている近くで、共用廊下側の壁面(専有部分内)にあることが多いです。また、上下階の住居の間取りに影響されて、リビングなどの変な場所にPSが配置されているケースもあります。図面でしっかり確認し、わからない場合は管理会社に確認をしましょう。

●給排水の違い
PSには給排水それぞれの配管が通っています。給水(上水道)と排水(下水道)の2種になり、給水(上水道)は公共の配水管から分岐して、給水管を通り、物件に引き込まれています。排水(下水道)は、各住居から出た排水や汚水が排水管を通り、公共の下水道管へ接続されています。

●配管の見分け方
給水管と排水管は簡単に見分けることができます。それぞれパイプの太さが違い、給水管は直径15〜20mm程度のパイプ、排水管は50〜100mmのパイプが多く使われています。すぐに見分けがつきますので覚えておきましょう。

(配管の例 / 太いパイプが排水、細いパイプは給水管やガス管)

水回り設備のレイアウト変更

●排水管の移動には注意しましょう
実際の給排水管の工事では、PSからの距離で配管(主に排水管)の勾配の角度や、使用するパイプのサイズを判断していきます。給水やガス、電気は配管できても、排水管の勾配が確保できない場所へは移動できない、というケースもあります。専門的な知識や技術が必要になってくるため、専門業者に依頼するようにしましょう。

●床の高さが変わる!?
例えば、キッチンのレイアウト変更をする場合、移動する場所まで給排水や電気・ガスなどの配管を這わせる必要があります。壁際などではない場合、床に配管をしていくため、その分のスペースを確保しなくてはいけません。一般的には「床の高さを上げる」という対応方法になります。バリアフリーにする場合は床の高さを揃える必要がでてきますので、段差の解消方法などは専門家に相談するとよいでしょう。


いかがでしょうか?キッチン(台所)の考え方も時代とともに変化してきて、より自由に、使いやすくなってきています。現状に不満がある方は、改めて検討してみるのもよいのでは?PSは水回りを考えるときに重要なポイントです。しっかり覚えておきましょう。

次回vol7は「水回り その2」です!水回り設備の風呂やトイレの説明になります。お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / 1枚目:remi hamabe,その他:みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部

Go!Go!TakakuLand!秋のイベント開催 ~シリーズ最終章~

平成29年11月12日(日曜)に、須磨区の高倉台団地において、リノベ住宅を公開します。実際に売り出し中の家も見学できるなど、新しい住まいのかたちを見るチャンスです。
このほか、高倉台まち歩き企画やすぐに役立つ断捨離セミナー、落ち葉を集めて焼き芋作りなど楽しいイベント盛りだくさん。家族そろって遊びに行こう!
詳しくは、こちらまで。
※まち歩き企画のみ事前予約が必要です。神戸すまいまちづくり公社管理課(078-291-6162)まで。当日空きがあれば参加できます。

リノベガイドvol.5 床について知ろう!その2

前回はいろいろな床の仕上げの種類を説明しました。床の仕上げには様々な選択肢がありますが、好みの仕上げを選んで見た目や印象を変えていきましょう。
今回は床の張り替えの作業工程と構造の説明になります。作業の流れと構造を知ることで断熱や防音、水漏れ、シロアリ対策といった床の機能の問題を考えることができます。しっかり覚えておきましょう。

マンション・団地の床の張り替えをするなら?

作業の工程を大きく分けると3つの工程になります。

1.既存の床材を剥がす

まず既存の床材をどうするかを考えましょう。実際に床の張り替えをする場合、現在の床材を剥がしてから新しい床材を張る工法と、既存の床材の上から新しい床材を張っていく、重ね張り工法があります。
前者は張り替えのため、床の高さがほとんど変わらないですが、解体作業や廃材の処理に時間やコストがかかります。
後者の重ね張りは、廃棄などのコストや時間を抑えることができますが、床の高さが変わるため、部屋の敷居や建具との調整が必要になります。

1-2.床の構造を確認しよう

床材を剥がすと床の構造を確認することができます。マンション・団地の床の構造は直床工法や二重床工法が一般的です。それぞれの特徴は下記のようになります。また、マンション・団地は騒音の関係から、床の工法が決まっている場合が多いので必ず確認するようにしましょう。

●直床工法
主にコンクリート床(スラブ)上に直接接着剤を使用し、直張りで仕上げ材を施工する方法です。マンション等集合住宅の防音フローリングの施工方法として普及しています。下地が平面で、強度を有する場合でないと用いません。一般的には直貼り専用のフローリング材が仕上げ材として使われます。

●二重床工法
マンションなどで遮音性を高めるために、コンクリート床(スラブ)の上に直接カーペットやフローリング材を張るのではなく、根太や支持ボルトなどで床下を構成し、緩衝材を入れて床板を二重にしたものです。また、床下に配管、配線が通っている場合はこの工法を用いることがほとんどです。

2.下地を整える

床の構造を確認し、床材の張り替え作業に進みます。新しい床材に張り替える場合は、下地の調整が必要です。下地材が腐っていたり、水平が取れていない場合はここで調整します。また、新しく張る材の厚みを考慮しながら、完成後の床の高さも計算しておきましょう。わからないことがあれば専門家に相談しましょう。

(作業例:下地調整、モルタルの上に根太をビス止めしているところ)
(作業例:根太の間に断熱材をはめ込みしているところ)

下地調整の方法は、二重床やモルタル均しがあります。二重床とは、防振ゴムのついた支持脚で床パネルを支える床仕上げ構造で、多くのマンションで採用されています。モルタル均しとは、モルタルで床面を水平にする工法です。モルタル均しの注意点として、マンション・団地でモルタルを使用する場合、「管理組合の規定で重量UPのためNG」となることもあります。必ず事前に管理組合に確認をしましょう。

(作業例:内部結露を防ぐため、気密シートを敷き込んでいるところ)

3.床材を貼る

(作業例:床張りの作業はチャレンジしやすいです。)

下地が調整できたら、あとは床材を張っていくだけです。床張りの作業はコツさえつかめば自分でもチャレンジしやすい作業ですが、壁際や隅の処理などはコツが必要だったりします。困難な場合は無理をせず専門家に相談しましょう。(床張りの具体的な作業はこちらの記事も参照ください。 )

戸建物件(木造物件)の床の床の張り替えをするなら?

戸建物件(木造物件)の床を張り替える場合も、大きな工程はマンション・団地と変わりません。ただ、木造物件の場合は重要なチェックポイントがあります。それは作業を行う前に床下を覗いて、構造の状態を必ず確認しておくことです。木造の場合は経年による構造材の劣化や、シロアリによって木材が傷み、構造そのものの強度が落ちていることがあります。後々になって建物そのものが倒壊してしまっては床を張り替えても意味がありません。ここは必ず専門家に確認してもらいましょう。

戸建物件(木造物件)の床の構造について

戸建物件(木造物件)の床の構造は根太張り工法と剛床(根太レス)工法が一般的です。現在では施工性の良さから剛床工法が主流になってきています。それぞれの特徴は下記になります。

(戸建て物件の根太張り工法例:大引の上に根太が格子状に張られている。配管も見える。)

●根太張り工法
根太に床フローリング材を直接施工する方法です。根太張り工法の場合は、コストは安く、工期も早く済みます。デメリットとして床鳴りが発生しやすく、又、重い家具などが根太と根太の間にかかった場合、床材がたわみやすく床鳴りも発生しやすくなります。

●剛床(根太レス)工法
一度根太に24〜28㎜程度の合板や杉板などを下地として張ってから、その上に仕上げ材を施工する方法です。根太張り工法よりも床の剛性は高まり、床鳴りも少なく、強度、耐久性共に高まります。

物件のタイプやそれぞれの構造、工法の特徴を理解して目的にあった工法を選びましょう。


いかがでしょうか?床のことを日々意識することは少ないですが、構造や工法を知ることでトラブルがあった場合も自分で対処できたり、張り替えて好みの仕上げにしたりと選択肢が広がると思います。興味を持った方は現在の住居の床下をチェックしてみるといろいろ発見があるかもしれません。

次回vol6は「水回り その1」です!お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
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図説 / みんなでつくろう編集部

リノベガイドvol.4 床について知ろう!その1


床を毎日意識することは少ないですが、歩いたり、座ったり、寝転んだりと常に利用しています。そのため中古物件は床が傷んでいたり、汚れていることも多いです。
床をリノベーションすることで、防音や耐久性などの性能アップができますし、部屋の印象を大きく変えることもできます。ポイントを理解すれば、自分で床の張り替えにチャレンジすることもできますよ!

今回の「床その1」では主に床の仕上げの種類の説明になります。次回の「床その2」で床の構造や工法、リノベーションのポイントなど説明していきます。

■床の仕上げについて(フローリング)

フローリングの仕上げは、無垢材や複合材といった床材の「種類」と、乱尺貼りや斜め張りなどの床材の「貼り方」の組み合わせです。部屋の用途を考えながら、好みに合わせて選びましょう。代表的なものをいくつか紹介していきます。

■フローリング材の種類

フローリング材は大きく無垢材と複合材に分かれます。
無垢材は広葉樹や針葉樹の自然素材のことです。自然素材ならではの肌触りやぬくもりが感じられ、調湿効果もあります。キズができた場合も補修がしやすく、経年による汚れなども味わい深くなるところが魅力です。デメリットは自然素材のため、湿気による収縮や反りによって隙間ができたりします。無垢材で床張りを行う際には季節や天候を考慮する必要があります。コストも複合材に比べると高価です。

複合材は合板や集成材の上に天然木や特殊シートを貼ったものです。基本的に調湿作用はありませんが、ダニ対策や耐衝撃性、防音などの機能や色・柄の種類がたくさんあります。コストを抑えることができるので多くの住宅で使用されていますが、ナチュラルな質感や雰囲気などが出にくいため、安っぽい印象になってしまうことも多いです。

せっかくリノベーションをするのですから、仕上がりの雰囲気が良く、愛着もわきやすい無垢材のフローリングにチャレンジしてみることをオススメします。無垢材の仕上げも、材料選びから塗装の方法までいろいろありますので、代表的なものを紹介していきます。

■無垢材の種類

針葉樹の無垢材:スギ材のフローリング例

無垢材の針葉樹は軽くて柔らかく、広葉樹は重くて硬いと言われています。一般的な針葉樹の床材はスギやヒノキ、広葉樹はウォールナットやオークなどがあります。使用する場所を考慮しつつ、素足で歩いた際の心地よさや、耐久性などに合わせて選んでいきます。その他にもたくさんの種類がありますので、専門家に相談するとよいでしょう。

広葉樹の無垢材:オーク材のフローリング例

■床の貼り方あれこれ

無垢材のフローリングにする醍醐味の一つに貼り方もあります。床材の貼り方で部屋の印象も変わります。一般的なバリエーションとして、乱尺張り、りゃんこ張り、斜め張り、ヘリンボーン張りを紹介します。

・乱尺張り
フローリング材の長さが一定ではないものを、つなぎ合わせていきます。(本実(ほんざね)加工 と言います。)一枚一枚が独立した形になり、独特な表情が出せます。一般的に無垢材フローリングで多く使われている張り方です。

・りゃんこ張り
こちらも割と多く見かける張り方です。同じ寸法の材を一定にずらして張っていきます。ずらし張りやレンガ張りと呼ぶこともあります。整然とした雰囲気の仕上がりになります。

・斜め張り
壁に対してフローリングを斜めに張っていきます。床の独立性が強調された、動きのある雰囲気が出ます。

・ヘリンボーン張り
無垢木材の小片をヘリンボーン(や市松)の模様に張り上げていきます。手間やコストがかかりますが、洋風のクラシックな雰囲気を感じさせる仕上がりになります。

■塗装について

塗装は材の保護になるうえ、好みの仕上がりを選べます。

塗装は木材の「保護」という重要な役割を果たしています。
無塗装のままの場合だと、飲み物をこぼしたシミや、日々の生活で生じる汚れもつきやすくなります。張り替えも気軽には出来ないので、しっかりと保護したほうが良いでしょう。また同時に、無垢そのままではなく、塗装をすることで「自分好みの雰囲気」や「より美しく」することも可能です。経年によって得られる雰囲気や味を楽しむためにもしっかり塗装しておきましょう。

塗装の種類は、大きく分けて2つのタイプがあります。下記以外にも目的や効果によって様々な商品がありますので、詳しく知りたい場合は専門家に相談しましょう。

○浸透性塗装
オイル塗装や蜜蝋ワックス仕上げのように塗料が木材の内部に浸透して保護するタイプ

浸透性塗装の例:マットな仕上がりに。

○コーティング系塗装
ウレタン塗装に代表される木の表面に塗膜をつくることで木を保護するタイプ

コーティング系塗装の例:ツヤがでています。

木の質感やキズ、汚れを味わいとして楽しむ場合は「浸透性塗装」、ツヤがあり、ツルツルした質感が好みの方は「コーティング系塗装」を選ぶとよいでしょう。

■メンテナンスのこと

無垢材のフローリングは定期的なメンテナンスが必要です。大変そうなイメージがありますが、ポイントを押さえれば簡単です。

浸透性塗装のフローリングの場合、日々の掃除では掃除機と乾拭きで十分です。半年〜1年に1回程度オイルや蜜蝋ワックスを塗ります。シミや汚れがついた場合はサンドペーパーで汚れを削り落とし、その部分にオイルや蜜蝋ワックスを馴染ませるだけで、簡単に補修することができます。

コーティング系塗装の場合、基本的には日々の掃除で問題ありません。水拭きをする場合は固くしぼった雑巾を使用しましょう。(天然素材のため過度な水分は反りや割れの原因となります。)あとは年に一度を目安にワックスをかけましょう。

■その他の仕上げあれこれ

フローリング以外の床の仕上げの紹介です。部屋の目的や用途に合わせて選びましょう。

[クッションフロア]
クッションフロアは耐水性や防水性が優れており、キッチンや浴室など汚れやすい場所に向いています。価格も安く、中古物件では多く使用されています。

クッションフロア例:水回りに使用することが多いです。

[タイル・カーペット・畳]
タイルは丈夫で、種類も多いのが特徴です。硬く冷たいので音が気になる場所には向いていません。
カーペットは柔らかく、遮音性が高いのが特徴です。裸足でもリラックスできます。汚れた際の掃除が少し大変なのがデメリットです。

左からタイル、カーペット、畳

畳は日本伝統の床材です。調湿機能もあります。近年では機能性・デザイン性の高い畳も増えてきています。

いかがでしょうか。フローリング以外にも床の仕上げにはたくさんの選択肢があります。目的や効果、予算に合わせてしっかりと選びましょう。

次回の「床 その2」に続きます。お楽しみに!

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イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部