前回はいろいろな床の仕上げの種類を説明しました。床の仕上げには様々な選択肢がありますが、好みの仕上げを選んで見た目や印象を変えていきましょう。
今回は床の張り替えの作業工程と構造の説明になります。作業の流れと構造を知ることで断熱や防音、水漏れ、シロアリ対策といった床の機能の問題を考えることができます。しっかり覚えておきましょう。

マンション・団地の床の張り替えをするなら?

作業の工程を大きく分けると3つの工程になります。

1.既存の床材を剥がす

まず既存の床材をどうするかを考えましょう。実際に床の張り替えをする場合、現在の床材を剥がしてから新しい床材を張る工法と、既存の床材の上から新しい床材を張っていく、重ね張り工法があります。
前者は張り替えのため、床の高さがほとんど変わらないですが、解体作業や廃材の処理に時間やコストがかかります。
後者の重ね張りは、廃棄などのコストや時間を抑えることができますが、床の高さが変わるため、部屋の敷居や建具との調整が必要になります。

1-2.床の構造を確認しよう

床材を剥がすと床の構造を確認することができます。マンション・団地の床の構造は直床工法や二重床工法が一般的です。それぞれの特徴は下記のようになります。また、マンション・団地は騒音の関係から、床の工法が決まっている場合が多いので必ず確認するようにしましょう。

●直床工法
主にコンクリート床(スラブ)上に直接接着剤を使用し、直張りで仕上げ材を施工する方法です。マンション等集合住宅の防音フローリングの施工方法として普及しています。下地が平面で、強度を有する場合でないと用いません。一般的には直貼り専用のフローリング材が仕上げ材として使われます。

●二重床工法
マンションなどで遮音性を高めるために、コンクリート床(スラブ)の上に直接カーペットやフローリング材を張るのではなく、根太や支持ボルトなどで床下を構成し、緩衝材を入れて床板を二重にしたものです。また、床下に配管、配線が通っている場合はこの工法を用いることがほとんどです。

2.下地を整える

床の構造を確認し、床材の張り替え作業に進みます。新しい床材に張り替える場合は、下地の調整が必要です。下地材が腐っていたり、水平が取れていない場合はここで調整します。また、新しく張る材の厚みを考慮しながら、完成後の床の高さも計算しておきましょう。わからないことがあれば専門家に相談しましょう。

(作業例:下地調整、モルタルの上に根太をビス止めしているところ)
(作業例:根太の間に断熱材をはめ込みしているところ)

下地調整の方法は、二重床やモルタル均しがあります。二重床とは、防振ゴムのついた支持脚で床パネルを支える床仕上げ構造で、多くのマンションで採用されています。モルタル均しとは、モルタルで床面を水平にする工法です。モルタル均しの注意点として、マンション・団地でモルタルを使用する場合、「管理組合の規定で重量UPのためNG」となることもあります。必ず事前に管理組合に確認をしましょう。

(作業例:内部結露を防ぐため、気密シートを敷き込んでいるところ)

3.床材を貼る

(作業例:床張りの作業はチャレンジしやすいです。)

下地が調整できたら、あとは床材を張っていくだけです。床張りの作業はコツさえつかめば自分でもチャレンジしやすい作業ですが、壁際や隅の処理などはコツが必要だったりします。困難な場合は無理をせず専門家に相談しましょう。(床張りの具体的な作業はこちらの記事も参照ください。 )

戸建物件(木造物件)の床の床の張り替えをするなら?

戸建物件(木造物件)の床を張り替える場合も、大きな工程はマンション・団地と変わりません。ただ、木造物件の場合は重要なチェックポイントがあります。それは作業を行う前に床下を覗いて、構造の状態を必ず確認しておくことです。木造の場合は経年による構造材の劣化や、シロアリによって木材が傷み、構造そのものの強度が落ちていることがあります。後々になって建物そのものが倒壊してしまっては床を張り替えても意味がありません。ここは必ず専門家に確認してもらいましょう。

戸建物件(木造物件)の床の構造について

戸建物件(木造物件)の床の構造は根太張り工法と剛床(根太レス)工法が一般的です。現在では施工性の良さから剛床工法が主流になってきています。それぞれの特徴は下記になります。

(戸建て物件の根太張り工法例:大引の上に根太が格子状に張られている。配管も見える。)

●根太張り工法
根太に床フローリング材を直接施工する方法です。根太張り工法の場合は、コストは安く、工期も早く済みます。デメリットとして床鳴りが発生しやすく、又、重い家具などが根太と根太の間にかかった場合、床材がたわみやすく床鳴りも発生しやすくなります。

●剛床(根太レス)工法
一度根太に24〜28㎜程度の合板や杉板などを下地として張ってから、その上に仕上げ材を施工する方法です。根太張り工法よりも床の剛性は高まり、床鳴りも少なく、強度、耐久性共に高まります。

物件のタイプやそれぞれの構造、工法の特徴を理解して目的にあった工法を選びましょう。


いかがでしょうか?床のことを日々意識することは少ないですが、構造や工法を知ることでトラブルがあった場合も自分で対処できたり、張り替えて好みの仕上げにしたりと選択肢が広がると思います。興味を持った方は現在の住居の床下をチェックしてみるといろいろ発見があるかもしれません。

次回vol6は「水回り その1」です!お楽しみに!


イラスト / Yosuke Yamauchi
画像 / みんなでつくろう編集部
図説 / みんなでつくろう編集部