みんなでつくろう

リノベエキスポ2019 イベントレポート

(会場となった神戸煉瓦倉庫)
(エントランス)

10月5日(土)6日(日)に開催されたリノベエキスポ2019に行ってきました!今回は初の京都・大阪・神戸の3都市開催。神戸はハーバーランドにある神戸煉瓦倉庫で開催されました。

(収納についてのトークショー)

「神戸で楽しむくらしのフェスタ」というコンセプトのもと、神戸でリノベーションに関わる事業者が集まり、ワークショップやリノベーション相談、グッズ販売を行っていました。
トークショー企画の無印良品さんによる「感じのよい暮らしのための4つのコツ」では収納についてのノウハウをお話しされていて勉強になりました。お客さんもじっくりと聞き入っていたのが印象的でした。

(スワッグ)

さまざまなワークショップの中でも「ドライフラワーを使ったスワッグ作り」は体験する方も多く、手を動かして楽しんでおられました。

(リノベーション用の物販も)
(使えそうなアイテムがずらり)

その他にもポストカードハンガー作りや建築廃材で作るスワッグボード作り、リノベ相談も賑わっていました。

多くの人で賑わっていたリノベエキスポ。リノベーションという選択肢がだいぶ広まってきていることを実感できましたが、もっと広がって住まい手の自由度が上がり、空家の活用にも繋がっていくといいなと思いました。

10/5(土)6(日) リノベーションEXPOが神戸で開催されます!

年に一度、開催されているリノベーションEXPOがなんと今年は初めて「神戸」でも開催される事になりました。

会場の「神戸煉瓦倉庫」に「素敵なくらし」をテーマとしたメンバーが大集合!
そして、人気イベントの「煉瓦倉庫マルシェ」、「煉瓦倉庫BEERマルシェ」とコラボ開催が決定。

同時開催には神戸煉瓦倉庫が位置する神戸ハーバーランド全体がイベントとなる「神戸ハーバーマーケット」も開催。

詳細はこちら

—-
開催日時:2019年10月5日(土)6日(日)
会場:神戸煉瓦倉庫(ハーバーランド)
主催:一般社団法人リノベーション協議会
共催:神戸煉瓦倉庫まちづくり実行委員会
後援:兵庫県、神戸市、芦屋市
—-

10/5(土) 住宅活用セミナー・相談会を開催します!

近年、日本では高齢化や人口減少の進行に伴い、空き家の増加が社会問題となっています。神戸市内でも、約10万8千戸(全住宅の13.1%)の空き家住宅があり、このうち4分の1(約2万8千戸)が腐朽・破損がないにも関わらず、賃貸や売却にも出されていません。市内のニュータウンでも今後空き家の増加が予想され、まちの活性化のためにも既存住宅の活用や流通の促進がますます重要となってきます。

そこで、空き家の活用メリットや住替え前の片付け準備など、住宅活用に関する様々な視点を盛り込んだセミナーおよび相談会を開催します。

詳細はこちらをご覧ください。

イベントPDFはこちら

◾︎日時・場所
日時:10月5日(土曜)
  【セミナー】13:30~ 定員100名(事前申込優先・参加無料)
  【相 談 会】15:45~ 先着10組(事前申込優先・参加無料)
場所:須磨パティオ健康館 3F パティオホール(神戸市市営地下鉄「名谷駅」下車 徒歩すぐ)

[リノベガイド実践編] 完結編


目標としていた工期が延びてしまいましたが、いよいよ今回で完結です。残っていた各部分の仕上げをしていきました。特に床貼り作業は友人に助けてもらえ、作業も楽しくスピーディに終えることができました。果たして出来上がりやいかに?

1.古材を使って壁を作る

2Fリビングの道路側の壁は他の壁と印象を変えたいと考え、DIYをしている友人の古民家から出た廃材(床板)を譲ってもらい、貼り付けていくことにしました。壁面に下地を組み、ボンドとフィニッシュネイル(細い釘)で固定して完成。

(下地を作っていく。)
(左/貼り付け完了 右/部分的に塗装を試したところ。)

2.塗装いろいろ

棚や壁面、窓枠の塗装をしていきました。壁面の下地は石膏ボードを使用し、貼り付けて隙間をパテで埋め、その上に直接塗装をしました。マスキングをしっかりしたつもりでしたが、塗装中ブラシから跳ねたペンキが予想外のところに付いてしまったり、マスキングが弱かった部分に滲んでしまったりと、キレイに仕上がらない箇所もありましたがひどい部分は後ほど剥がして補修しました。窓枠は鉄サビがひどかったため、ケレン(サビ落し作業)をした上に、サビ止め用油性塗料で塗装しました。こちらも元は赤茶色の枠でしたが、黒になると引き締まった気がします。

(扉や窓枠を塗装。マスキングはしっかりとしましょう。)

1F玄関の扉の木枠の色に悩んでいたのですが近所に塗料屋さんがあり、相談したところ調色してもらえるとのことでブルーグレーの色を作ってもらいました。塗装して印象が明るくなりました。色目は想像より少し明るい仕上がりになりましたが、経年で味が出てくればよいなと思います。

(玄関の塗装も完了)

3.無垢材の床を貼る

いよいよ2Fの仕上げとなる床貼りです。無垢材のクリア塗装済みのものを購入し、友人たちに手伝ってもらいながら貼っていきます。無垢材は1年を通しての温度、湿度で伸縮します。そのため、貼っていく際には少し隙間ができるようにスペーサーを挟みながら進めていきました。夏場の作業であれば逆にキッチリと詰めて貼っていくことになります。床貼りの作業は慣れてくると単純ですが、一人では時間がかかりすぎるため複数人でやることをおすすめします。

(みんなでやると早い!)
(朝から作業して、夕方には完成しました。)

4.床の仕上げ塗装や細かな仕上げ

3Fの床は既存のままですが、掃除をしてクリヤー塗装にしました。あとは電源周りのカバーをつけたり、階段の補強をしたりして完成です。全体はこのような感じになりました。設備面ではエアコンを今後取り付ける予定です。

(既存のフローリングは塗装仕上げ)

階段の踏み板が抜けていた場所は余ったフローリング材を使って補修しました。

(仮で合板を置いていた場所に余ったフローリング材を貼った)

5.かかった費用

かかった費用は、丸ノコやサンダーなどの工具を始めネジやマスキングテープなどの小さな資材の費用も含めるとおおよそ150万円程度になりました。その内、プロに依頼した金額は約80〜90万円程度になると思います。給排水やガス配管、電気配線に加え、サニタリーの造作、トイレやシャワーの設備設置がおおよその内容です。どこまでやるかによりますが、今回は最低限の仕様や仕上げにしています。

6.DIYを通して学んだこと

スケジュールは大幅に延びてしまいましたが、なんとか完成できました。初めてのDIYチャレンジでしたがプロの大工さんや、経験者の友人に助けてもらってこそカタチになったと思います。個人的な感想として、DIYで自分の思うように作っていくことは単純に楽しいですし、愛着が湧いてくるので、失敗もだんだん気にならなくなってきます。大きな失敗をした場合も専門的な部分でなければ、やり直しやリカバーが案外できることも分かりました。

とはいえ、気になっているところは天井高を重視して剥き出しにした天井です。特に最上階の3Fは屋根(天井)に断熱材が入っていない状態のため、夏場を過ごしてみて手を加えてもいいかもしれません。手間はかかりますが後々問題が起きたり、変えたい箇所が出てきたら自分でできることがDIYの大きな魅力ではないでしょうか。

あと、自分が手を動かし、動くことでコストが抑えられることもやはり大きなメリットです。デメリットは私のように働きながら進める場合は時間がどうしてもかかってしまう点かと思います。ここはプロにお願いしたり、知人・友人に手伝ったりしてもらうことで調整していきましょう。

(2Fの施工前と施工後)
(3Fの施工前と施工後)
(家具を入れて、住んでみながら様子や使い勝手をみます。)

最後に、難しく考えずにとりあえずやってみる!ということが一番のポイントかもしれません。興味のある人は是非チャレンジしてみることをおすすめします。DIYやセルフリノベーションの対象となる物件の多くは中古物件です。ピカピカの新築を目指すのではなく、いかに自分が使いやすくて、心地良いかを優先しましょう。さぁ、レッツリノベーション!!

(友人たちとわいわい。)

住み手に編集権を。廃屋をDIYして修繕、賃貸を繰り返す大家さん

みんなが諦めてしまうようなボロ廃屋を、気合でDIYで直して自分で住み、その後賃貸するというスタイルの大家さんがいる。現在は兵庫区の物件を改修中と聞き、お話を伺った。

築古物件を次々とレスキューしていく

西村周治さんは普段は不動産仲介業を行っているが、道路条件も良くない廃屋などを条件が合えば購入し自らDIYでリノベーション、住みながら改装して、できあがったら引っ越して賃貸をするということを繰り返すヤドカリのようなライフスタイルをしている。

(西村周治さん)

きっかけは灘区の住居がスタートだったそう。賃貸で借りていた住まいを、DIYで修繕改装をしていたところ、そんなに気に入ってもらえるんだったら、1棟まるごと建物を買ってくれないかということで購入することになった。1階に別の方が賃貸で借りられていたので、自然に大家さんになることができたとのこと。(過去の記事はこちら

(DIYして暮らしていた灘区の住居)
(DIYして暮らしていた灘区の住居)

そこから塩屋の団地、板宿のビル、兵庫区のシェアハウス、塩屋の戸建てと次々にDIYで改装し、賃貸物件として貸し出し、本人は新たな物件に移っていく暮らし方になった。そもそもの物件の選び方を聞いてみると、「基本的に建物がボロければボロいほど萌えます。動物にはスカベンジャーという腐肉食の動物がいますが、僕も不動産界隈のスカベンジャー的な存在です。道路条件が悪いボロい建物で、一般の不動産屋さんが敬遠するような案件ばかりを、漁ってレスキューしています。」とのことだった。いわゆる築古の物件は価格も安いことが多いが、その分立地が不便だったり、修繕にかかるコストが大きい。西村さんは後者をDIYで行うことでコストダウンをしている。そしてバリューアップが成功すると前者のデメリットも改善しやすくなる。

(ボロボロの建物に魅力を感じるという西村さん)
(昔、DIYで作った五右衛門風呂)

こんな築古物件のDIYを繰り返すようになったのは、昔からDIYしながらボロボロの廃屋を賃貸で借り、修繕しながら移り住んできた経験があるからだそう。西村さん曰く、「当時は設計事務所に勤めていて、給料も10万円以下と、とにかくお金がなかった。そこで家賃を安くするために賃料の安い一軒家を改装し、シェアハウスにして一人5000円と驚異的に賃料を安くして生活をしていた。がんばって改装して廃屋も生まれ変わることができれば、なんとなく人が集まってくれるようなイメージがあった。」とのことだった。

住み手に編集権を

西村さんが賃貸で貸し出している物件には特徴がある、それは入居者による改装を基本的にOKしている点だ。前回の平井さんの記事(過去の記事はこちら)でも触れているが、多くの賃貸物件では住人による改装は制限されている。そんな中、「住む人に編集権を任せることが大切。」という西村さん。理由を聞くと、ある程度は改装して気に入ってもらえるような空間には仕立てるが、さらに改装してもらうことも可能にすることにより、より自分の空間にしてもらえたらいいなという思いがあるのだそう。

兵庫区の築古物件を改装中

西村さんが現在改修中の物件は兵庫区平野エリアにある。このエリアはかつての日本家屋が残っていて、細い路地などにも趣を感じるようなエリア。老舗の温泉は地元の人を始めいつも賑わっていて、近頃は移住者も増えているとのこと。西村さんの購入した物件もかつての貿易商の戸建て物件とのことだった。

(平野エリアにある物件を改装中。)
(DIYアシスタントはドイツ人のサイモンとイギリス人のガブリエル。)
(作業が終わると近所の湊山温泉で汗を流す)

改修後の住み手がもう見つかっているとのことで急ピッチで作業を進めている。外国人のお手伝いや、知人友人たちも参加して、空いた時間を作業に当てている。

学生たちの実験場

以前に取材させていただいた物件がある。学生たちと一緒にDIYでリノベーションした元廃ビル(過去の記事はこちら)。西村さんはこちらもシェアハウスとして運営している。最近住人たちの意向で、またイチから作り直しを始めたという。西村さんはこの物件も学生たちに編集権を任せており、彼らの相談に乗りつつ、一緒にDIYをしたりしている。

(DIYで作った内装を取り払ったところ)
(入居者たちがまたイチから作りなおすとのこと)

取材を終えて

古い物件をリノベーションすることやシェアハウスに住むことも一般化し、浸透してきたように思う。これは経済的な側面もさることながら、住み手の住居に対する意識が高くなってきたことや、ライフスタイルの多様化が進んだ結果とも言える。西村さんのように住み手に編集権を与える、といった考え方は、今後ニーズがどんどん高まってくるのではないだろうかと感じた。また、築古の物件は全国的にこれからも増えてくる。新しい使い方が模索されている今、西村さんのような暮らし方も一つの事例としつつ、コストを抑えて複数の物件を所有、活用していく方法がどんどん出て来て欲しいなと思った。

※記事内の文章は原文を尊重しています。

[リノベガイド実践編] 後編

今回のリノベガイド実践編は電気・水道の配管から水回り設備の設置になります。専門的なことも多いためプロに依頼。基本的にはお任せになったのですが、コツなどを教えてもらえて勉強になりました。

1.プロに依頼する

2階にトイレやシャワーブース、キッチンを設置するためには給排水の配管や電気の配線が必要です。ガスの配管を依頼したときもそうですが、配管や配線は失敗すると漏水したり、電気が使えなかったりと後々大変なことになるためプロに依頼することにします。
前回では工務店に見積もりを依頼し、相談をしていたのですが、結果としてコストや工事スケジュールが合わない部分もあり、別のプロにお願いすることになりました。改めて現場で相談し、柔軟に対応してもらえることになり一安心。まずは水道と電気の配管、配線の作業をしてもらいました。

2.水道の給排水の配管

(左:床の構造に穴を開けます。 / 右:ここに給排水の配管が通ります。)

2Fにシャワーユニット、トイレ、洗面のスペースを作っていきます。調べて貰ったところ、既設の給排水管が機能していないことが分かり、1F〜2F間は新たに配管をすることになりました。まずは1Fにあった給排水の配管から分岐させて上げてくる必要があるため、2Fの床に穴を開けました。(基本的に構造体に穴を開けることは少ないため、しっかり確認してもらってから行いましょう。)

(左:1Fから上げてきた配管 / 右:3Fへの配管)
(グレーの配管が排水、白の2種が温冷水の給水管、グレーのコードが電源線)

シャワーブースやトイレのおおよその位置を決めて配管をしていきます。3Fに洗濯機置き場もお願いしたので、上階にも給排水管を通してもらいました。作業途中で教えてもらったのですが、既設の水道管から水漏れがあったとのことで修理もしてもらえ、助かりました。また、電源コンセントの位置や照明器具の取り付け位置も伝えて、電気の配線も合わせて進めてもらいました。

3.シャワーユニットと間仕切り壁を作る

(サクサクと組み立ててもらえました。)

続いてシャワーユニットの組み立てを行いました。今回はユニットバスのシャワーブース含め、トイレや洗面、キッチンとそれぞれの水栓など施主支給にしてもらいました。自分であれこれインターネットやホームセンターで購入して、ずいぶんコストダウンになったものの、それぞれの仕様やサイズを間違わないように選ぶのは楽しくもあり、大変でもありました。シャワーブースの組み立てと設置も個人で行うことも可能ですが、作業時間も考えるとプロにお願いした方が良いかもしれません。

シャワーブースの位置が決まると、そのサイズに合わせて間仕切り壁を作ります。ここは脱衣スペースにもなるので扉も付ける予定です。扉の設置には壁の水平垂直をしっかり出しておかないと、扉がうまくはまらなかったり、開閉の動きがおかしくなったりします。

(左:垂直を出しているところ / 右:壁ができてきました)

4.電気の配線

壁下地に合わせて、電気の配線も進めていきます。必要なコンセントの数やスイッチの場所などを相談し、配線と設置をしてもらいました。


古い建物のせいか、コンセントの数がとても少なかったので、なるべく多めに設置してもらうことにし、既存の使えそうなところはそのまま使用することにしました。コンセントカバーやスイッチもこだわりたい部分ですが、そこは最終の仕上げと合わせて考えることに。

5.水回り設備の設置

(左:洗面 / 右:キッチン、配管が通るため少し床を上げている。)

水回りの床下配管は排水が流れるように勾配が必要なため、浴室部分とキッチンの床は高くなっている仕様に。床が出来上がったら、購入したそれぞれの設備を設置していきます。水栓を取り付け、トイレは床にクッションフロアを張った後に取り付けて完成です。

(トイレもつきました。)

6.目標期間に間に合わず…(後編まとめ)


DIY初心者として色々調べたり、失敗したりしながらのこのチャレンジ。お願いしたプロの人からちょっとしたコツや考え方を教えてもらえたのはとても勉強になりました。電ノコの使い方から、水平垂直の簡単な測り方などなど。あと当然ですがプロは作業が早い!私が平日働いている間にもどんどん進んでいきました。

ただ、工務店とのやり取りや、自分の仕事の状況もあり、目標としていた3月末の完成には大幅に遅れてしまいました。今回の後編で最後の予定でしたが、最後の床貼りや仕上げについては特別編として、記事にすることになりました。引き続きお楽しみに!

※記事内の文章は原文を尊重しています。

サラリーマンオーナーが暮らしながら作る元居酒屋の自由なビル

ビルを購入?それは今や決して一部の富裕層や“人生を賭けた大チャレンジ”でもないようだ。兵庫区の老舗居酒屋があった古ビルを普通に働く会社員が購入・改装・賃貸し、自由に楽しむことができている。そんな事例をお届けすべくお話を伺った。

(平井さんが購入した通称「ヤスダヤビル」)

自由に改装できる古ビルをワンルーム並みの価格で購入

平井陽さんは、建設会社に勤めるサラリーマンだ。以前まで兵庫区の和田岬に住んでいた。(当WEBサイトでは過去に仲島義人さんとの改装活動を取材している(記事はこちら))和田岬で仲間たちと週末を中心にDIYで「カルチア食堂」を作り、その隣のビルも改装しながら活動していた。それがひと段落し新たに自由に改装できる物件を探していたところ、2017年に兵庫区の西出町にある老舗居酒屋が閉店、その店舗が入っていた築50数年の中古ビルを紹介される。

平井さんは「賃貸では制限もあって自由に改装できないところが多い。数千万円っていう話じゃなく安く購入できて、気の向くままに改装できる自分の空間が欲しかった」との考えから、一般的な中古マンションワンルーム並みの価格帯で売りに出たそのビルをローンで購入した。

賃貸で出した店舗部分を借り手と一緒にカレー屋にリノベーション

(左:1Fの元居酒屋を改装中 / 右:造作したオブジェのようなもの)

平井さんが1Fの元居酒屋部分を賃貸に出したところ、カレー屋を出店したい人が見つかった。現在はオーナーである平井さんと借り手が一緒になって「カレー屋」作りに勤しんでいる。一般的な感覚では、店を始めたい借り手が主導で進めていくところだが、取材当日は平井さんがリードして改装作業を進めていたのが印象的だった。それぞれ思うがままDIYをしていて、独特な個性ができつつあるのも面白い。

営業開始は3月中を目指しているとのことだが、オープンしてからも気になるところがあればその度に改修していくつもりだそう。「藤村さん(借り手)のスパイスカレーは本当に美味しいし、一風変わった人柄なので、すごくいいお店になると思います。」とのことで、オープン後も楽しみだ。

住居部分も住みながら“人間と同じで完成のない”DIY

(共用リビング、窓からの抜けが気に入っているとのこと)

平井さん自身も上階に住みながら、住居部分のDIYも行なっている。2階や3階を案内してもらうと、床張りも途中だったり、雨漏りもしていたりとこちらも全てが完成していない状態。いつ頃に完成予定なのかを聞いたところ「人と同じで完成はないと思っています。」とのこと。
物件自体も過去の改装によって階段が途中で切れてふさがっている箇所もあり、迷宮のような造りになっていた。また、部屋の一部は友人とシェアしているとのことだった。

(自室、壁面も造作の途中)
(剥き出しのコンクリートブロック壁に棚を増設)
(改装途中の部屋にも造作したオブジェ)

自分や仲間が楽しく遊べる空間を

アーティストや自由業のようなスタイルに見えるが、平井さんは大手企業のサラリーマンだ。平日は仕事も多忙なため、週末や夜にDIYを行なっている。建築関係の仕事なのでDIYやリノベーションも経験豊富なイメージを持っていたが、昔からやっていたわけではないとのこと。DIYのコツは2件目にあたるカルチア食堂の隣のビルを自分で改装した際、住人からのオーダーが思ったより多く、いろいろチャレンジして覚えていったとのこと。その結果、カルチア食堂も含め「結構上手くいったし、面白いな」と思うようになったという。

(話がひと段落するとビール片手に作業のつづき。)

こうした活動のきっかけは、「自分や仲間が楽しく遊べる空間や出来事が欲しかったから」という平井さん。そして「このエリアには空き物件がたくさんあって、それを安く賃貸や購入することができ、自由な表現活動を許容する余地があった。」また、「今取り組んでいるヤスダヤビルもひと段落したら、次の物件を探し始めると思います。」とのことだった。

新しい不動産投資?(取材を終えて)

平井さんは「空間を自分の思うように作りたい。」という欲求を自分の手を使って楽しんでいた。それはアーティストなどの限られた人の表現活動のようにも見えるけれど、住む場所という範囲で考えると本当は多くの人が望んでいる欲求でもあると思う。やっぱり自分が住むところは自分が気に入るようにしたい。平井さんはそれを仕事の合間にコツコツと進めている。

また、ローンで購入した物件を賃貸に出したり、友人とシェアをしたりと投資的な側面もあるところが面白い。従来の賃貸物件やマンションを購入してもそうだが、管理面や改装面で自由が制限されているところがほとんどだ。平井さんはその制限を取り払うべくこの1棟ビルを購入した。先述したが、自分が住んだり、働くところは自分が気に入るようにしたいと考える人には平井さんのような人がオーナーの物件は魅力的に映るのではないだろうか。

お話を伺い、住居はもっと自由で、気に入るまで作り直すという視点がポイントに感じた。その視点を持つことで、今までとは違った物件の見方ができそうな気がした。

取材後日 1階カレー屋さんのトライアルオープン

取材から数週間後の3月中旬、1階のカレー屋さんにてプレオープンイベントが開催され大盛況でしたと、平井さんから連絡と写真をいただきました。

(プレオープンの様子)

※記事内の文章は原文を尊重しています。

住人による自然発生的コミュニティ

築古でバルコニーやエレベーターがない元公団ビルに若者が集まりつつある。集まる秘訣は一体なんだろうか。オーナーがDIYで改装し、住人たちによる主体的なコミュニティ作りが行われていると聞き、オーナーに話を伺った。

若者が続々と入居する築古ビル

(様々な職業の若者が集まりつつある。)
(築50年のレトロビル。便利な立地でもなかなか入居が決まらなかった。)

三宮駅前の築50年の元公団ビル。駅前という便利な立地で1Fには人気の美容室や有名洋菓子店が
あったが、なかなか入居者は決まらなかった。一因として考えられるのが、空室を一般的な新築のようなリフォームをした点だ。部屋の新材特有の匂いなどが不評だったという。そこで、オーナーはDIYで建築当時の質感の良さを活かした改装をしたところ、続々と入居が決まっていき、今では人気物件になってきている。

入居者は大手企業の会社員や公務員をはじめ、アーティスト、ギャラリーオーナー、陶芸家、ブロガー、科学者など業種は様々で年齢層も20代〜40代と幅広いとのこと。あえて入居者の共通点を見つけるとすれば、不便さを面白く感じるDIY精神があるところだという。押入れをベッドにして寝ている住人や、植物が好きで100種類以上の植物と一緒に生活している住人、寝袋で寝てアウトドア用のガスバーナーで調理するキャンプ用品で生活する住人、家に陶芸の釜やろくろがある住人など築古の物件ならではの間取りや質感を活かして、住みやすいように暮らしている。訪れるたびに新しい工夫を発見できて面白いそうだ。

(入居者の部屋もそれぞれ個性的。)

元公団ビルオーナーが率先してDIY

(当時の質感の良さを活かし、オーナーがDIYで作っていった。)

この元公団ビルは、おそらく三宮駅周辺のどのマンションよりも駅に近い。立地は抜群だが、長年、住戸数36戸のうち1/3近くが空室の状態が続いていた。オーナーの杉野さんは現状をなんとかしようと、管理人や家族と一緒に「チーム杉野」として空き部屋のリノベーションに取り掛かる。

臭いを抑えるため壁紙は全て剥がし、珪藻土入りの塗料で塗装仕上げをした。床には元々何重にもペンキが塗り重ねられていて木目が見えなかったが、サンダーで表面を削り落とし、再び素材の輝きを取り戻した。和室は今のニーズに合わせて杉の無垢床を新たに敷き、ココナッツオイルと蜜蝋で仕上げた。

古い物件を持つオーナーは、内装や設備が古くなってくるとリフォームすることが多いが、築浅物件と同じような内装にしてもなかなか入居者が決まらないことも多い。そういった築浅のような内装を好む人は、内装だけ綺麗な築古物件ではなく、結局は築浅物件に流れるからだ。古い物件は、築浅物件のようにリフォームするのではなく、古い質感を活かした改装を施し、古い質感が好きな人に向けた改装が効果的ではないかと思う。このチーム杉野の実例がいい例だろう。

共用スペース作り

(6階の1室を共用リビングにリノベーションした。)

部屋の改装に加えて、共用スペース作りにも取り掛かる。6階最上階の1室を、住人が集える共用リビングに改装した。オーナーの立場から考えると、空室は少しでも貸して、賃料収入を得たいと思うのが一般的だろう。しかし、あえて住人が集える場所を作ったことでバリューアップを図った。

(左:屋上にはBBQができるテラス席やカウンターキッチンまで完備。右:自転車置き場も。)

古い質感が好きな人が好む物件は、実は意外にも数が少ない。チーム杉野がDIYで作り上げた部屋
は、そういった人たちのニーズを掴んだ。そして、屋上のテラス席や共用リビングも他の物件にはない個性や希少性があり、空き部屋は少しづつ埋まっていった。

つなぎ役が住人主体のコミュニティを活性化させる

ただ部屋を改装してもコミュニティは生まれない。しっかりとしたコミュニティには人をつなぐキーマンがいる。この公団ビルの入居者でもあり、不動産業者の森さんのサポートによって活性化が進んでいったとのこと。入居者の森さんに話を伺った。

「何件か不動産仲介させていただくうちに、このマンションに愛着が湧いてきちゃって。この物件は古くてエレベーターもなくて、すぐ横にはポートライナーが走っていて電車の音も正直少し気になるけど、古いものが好きな人にはたまらない趣がある。そんな物件に興味を持って入居される方は個性的で面白い方ばかり。まだまだ空室も多かったので、自分が仲介して携わったお客さんとその後も継続的な関係性を作れたら面白いなと。また、当時は西宮の団地型マンションに住んでいたのですが、隣近所の方との交流はほとんどなく、共用階段ですれ違うと挨拶はするけど気まずくて目も合わせない。それがすごく嫌で、でもそれがマンション暮らしでは一般的だということにも違和感を感じていました。隣近所に住む人と、もっと仲良く昔ながらの長屋暮らしみたいな暮らしができたらいいのになと思ったのが、このマンションに住み始めたきっかけです。」

(古くからの住民との交流も生まれてきた。)

オーナーの杉野さんに住みたいと伝えたら、「ぜひ住んでください。」と倉庫として使用されていた改装前のボロボロの部屋を貸してもらえることに。そこから半年ほどかけて杉野さんや管理人さん達と一緒にコツコツと部屋を改装して住み始めたとのこと。

「それから、住みながら不動産仲介をし、仲介したお客さん同士を繋ぐきっかけ作りをしていきました。新しく入居者が入るたびに歓迎会やBBQ、飲み会、それぞれの部屋のお宅訪問会も定期的に開催しました。特別なことは何もしてなくて、酒を片手に同じ食卓を囲んで美味しい料理をみんなで食べる。ほぼそれだけですが、回数を重ねるごとに住人の距離が少しずつ縮まりました。

(住人が集まるたびに開かれるお宅訪問会。)

住人同士が仲良くなってくると僕が声を掛けなくても、廊下でたまたま出くわしたのをきっかけに飲み会が始まったり、毎日のように集まってご飯を食べています。今では住人主催のイベントやお誘いが多く、僕が楽しませてもらっていることの方が多いです。毎週のように誰かが友達を連れてきますが、面白い人の連れてくる人はやはり面白い。このマンションに住んでから人間関係がすごく広がったし、いつも刺激を受けています。」

コミュニティが出来てきたことによって、入居者の紹介で新たな入居者が決まることが増えたとのこと。今では募集すると一週間程度で入居者が決まるような人気物件となっている。

「あくまで僕は、住人の一人としてきっかけを作っただけ。住人主体で日々面白い場へ、入居満足度の高いマンションへと変貌を遂げています。それはオーナーの杉野さんが、住人の自主性や、住人自らやりたいことができる余白を作ってきたからこそ起こってきたことだと思います。」

他のエピソードとして、住人の一人が玄関前に植物を置き始めてから、連鎖的に各々玄関前に個性的な植物がずらりと並び、今では共用廊下は植物でいっぱいとのこと。そして、植物を置き始めてから古くから住む住人との会話も生まれたそうだ。

また、屋上ではプランターで畑を始める人もいたり、綺麗好きな人は共用リビングの清掃や片付けをしたりと、みんな自分のスキルや持ち物を共有し、住人たちも自分たちの暮らしをDIYしながら生活しているとのこと。

(左:屋上で家庭菜園を始める人も。 中:住人主体で日常的に飲み会が開かれるようになった。 右:もちつきで古くからの住民とも交流。)

「古いから、雨漏りやトイレの水が詰まることもたまにある。しかしそんなマイナス点も、隣近所みんなで共有したらあるあるって笑い話になったり、下の部屋に雨漏りしたり隣の部屋の物音が気になっても、みんな親しいからお互い様だねってなる。」

関係性が出来ているからこそ、住人が不自由に感じていることや不満や不具合も、話が大きくなる前にオーナーにフィードバックができる。オーナーとしては事前にトラブルや不具合を解決できる。これは長く住んでもらえるきっかけにも繋がっているのではないだろうか。

引き継がれるオーナーの世代交代

現在、オーナーの世代交代をするべく、杉野さんの息子の吉彦さんがマンションに移り住み、毎日住み込みでDIYしながら管理を行っているとのこと。森さんは「一住人として同じコミュニティにオーナーがいることはすごく重要な気がする。住人の不満やトラブルにはすぐに対応してくれるし、貸主と借主という関係性を超えた信頼関係が出来上がっているから、お互いに何かあった時に気軽に相談や話ができる。」と言う。
吉彦さんは住民とのコミュニケーションを大事にし、古くから住む住人もこのコミュニティに入ってもらおうと日々努力しており、少しずつ交流も生まれてきているという。

コミュニティができて、空室が埋まってきた。今後の課題はコミュニティ内のルール作りとのこと。住人に自主性や自由度を与えつつ、危険やトラブルを回避し共通認識を作ることはとても重要だ。吉彦さんは住民と一緒になってルール作りを始めている。

取材を終えて

物件オーナーは若い世代も増えてきつつあるが、まだまだ年配の方が多い。活性化がうまくいかずに困っている物件オーナーも多いのではないかと思う。今回取材した元公団ビルはシェアハウスでもソーシャルアパートなんて小洒落たものではないけれど、住人と住人、住人とオーナーが繋がりをしっかりと持てる場として機能していた。

活性化の秘訣は2つのポイントがある。一つは「古い建物に合わせた改装」だ。賃貸物件ではリスクになりがちな無垢材を床に使ったりしながら、古い建物が持つ質感を活かした改装をDIYで行なった。もう一つは入居者の森さんのような「キーマンの存在」だ。コミュニティの活性化にキーマンは欠かせないが、これも縛られる必要はないのではないかとも思う。キーマンはオーナーであっても良いし、入居者でもいい、または近所の誰かでも。大切なところは「一緒につくる」ということ。

ここの住人たちはたまに気が向いたら誰かが声を掛けて、集まりたい人は集まる、そんな程よい距離感の生活を楽しんでいる。それは、森さんも話してくれた「長屋暮らし」のような暮らし方に近いのかもしれない。それを見たり感じたりして、魅力に感じた人がまた新たに集まってくるのだろう。

[リノベガイド実践編] 中編


前編では天井と壁の塗装作業をメインに進めてきました。今回は床の下地作りと設備関係を進めていきます。下地作りはもちろん初めて。果たしてうまくいくのでしょうか。

1.床下地の工法を考える

(2Fの床:スラブ(コンクリート床)がむき出しの状態。)

2Fの天井と壁は塗装ができたので、床下地作りに入っていきます。現状は全て取っ払われたスケルトン状態、まずは床下地の工法をどうするか?を決めなくてはいけません。床下地の工法は根太に直接床材を張る根太張り工法、根太に合板などを下地に張ってから床材を張る捨て張り工法、スラブ(コンクリート床)などに直接床材を張る直床工法、根太や緩衝材を間に入れ下地を張り、床板を二重にする二重床工法、といろいろな工法があり、それぞれのメリットデメリットがあります。専門家に相談したところ、「根太転がし」というアドバイスをもらいました。これはスラブに直接根太を置いていき、合板の下地を張ります。二重床工法に近い工法です。コストも安くすみますし、天井高もいっぱいまで取れそうなのでこの工法で進めていくことにしました。今回のチャレンジは建物も古く、隙間も多いので断熱や防音はしない方向で考えています。

2.作業開始、不陸をどうするか

(左:上部に見えるのが自作のスペーサーと不陸を調整するのための2mm厚ベニヤ板 右:仮置きができました。)
(位置決め、不陸の調整、ボンド固定を繰り返して敷き詰めました。)

工法が決まったので、早速材料の買い出しに出かけ、35mm角の根太と12mm厚の構造用合板を購入しました。根太を303mm間隔で転がしていきます。文章で書くと単純ですが、初心者にはこの作業でも上手く間隔を取れずサクサク進みません…。そこでスペーサーを作成し、間に挟みながら位置決めをしていくと作業がスムーズに進みました。

シンプルな根太転がし工法ですが、スラブの不陸(不陸=ふろく。床面のデコボコ)が大きい箇所も多く、水平を取ることが難しい場所が多々ありました。そこで2mm厚のベニヤ板を5cm角にカットしたものを大量に作り、不陸の大きい箇所に挟んで調整を行いました。位置が決まればコンクリート用ボンドで固定して完了です。

3.構造用合板を張っていく

(左:仮置きしてサイズを出します。中:端が根太に乗るようにカットします。右:後でビス止めのため、根太のラインもつけておきました。)

次は構造用合板を張っていきます。床面を埋めていくようにサイズを測り、電動ノコギリでカットし、ビス止めを繰り返していきます。この作業もそれほど難しくなく、すぐに慣れてドンドン進めていけます。

(左奥のエリアに設備工事が入るので一旦ストップ。)

ただ、この2Fの部屋にはシャワールームや洗面、トイレといった水回り設備を設置予定です。給排水の配管がまだ終わっていないので工務店に相談したところ、水回りのエリアは勾配配管のため、床を上げる必要があるとのこと。床の下地を全部張ってしまっても工事の際に剥がすと言われました。一気に終わらせたかったのですが、水回り設備のエリアは下地を張らず、一旦ストップすることになりました。

4.3Fの壁剥がしと壁材の張り付け

(左:壁を剥がした状態。右上:下地はそのまま使うことにしました。右下:剥がした際に残った釘も抜いて綺麗にしました。)
(左:床下地と同じようにサイズを測ってカットし、張っていきました。右:どんどん張っていきます。)

2Fは配管、設備工事を待つことになったので、次は3Fの壁に取り掛かります。とりあえず既存のベニヤ板の壁をバールでメリメリと剥がしていきます。すると壁の下地である胴縁(横方向)と間柱(縦方向、胴縁を受けるための柱)が出てきました。下地はそのまま使う予定ですが、ボロボロの部分もあるため部分的な補強が必要です。床下地の合板と同じような作業で、サイズを測りカットした後、仕上げ釘でバンバン留めていきます。こちらも電気配線が入る場所を残して張っていきました。

5.工務店とのやりとり

(水回り設備が入るエリア、細かい部分まで決めておくべきでした。)

2Fの設備関係で工務店とのやりとりを行い、いくつかの設備機器を自分で手配することを相談しました。コンセントやスイッチの電気関係や洗面やキッチンに使う水栓などです。ユニットバスなども自分で手配は可能と言ってもらえたのですが、組み立てや設置は初心者にはそれなりに大変です。ユニットバスについては工務店に材工一式でお願いした場合の見積もりもお願いし、検討することにしました。

また、使用予定の水栓の種類なども工務店に聞かれるまで考えていませんでした。(工事の後から決めれば良いと思っていました…。)調べてみると混合栓や単水栓、壁付けや台付けなど様々な種類があります。それぞれの使用や配管のイメージまでは決まっていなかったので選択に時間がかかってしまい、思ったより時間をロスしてしまいました。

6.中編まとめ

床を作り始めると、下地だけでも塗装と同様に見た目がどんどん変わってきてテンションが上がりました。工事の関係で2Fの床の完成までいけなかったのですが、今後も楽しみになってきました。工務店とのやりとりで個人的に難しいと感じたポイントは、とりあえずでも最終に近いイメージを伝えておくことでした。電源コンセントやスイッチの位置、天井の照明の位置やイメージ、水栓の種類、配管のことなどの細かい部分です。慣れもあると思いますが、こうしたことがスムーズに進めて、かつイメージした仕上がりにするには重要なポイントだと思います。

完成目標としている3月いっぱいまで、かなり時間がなくなってきました。これからどんどん追い込んでいきます!次回もお楽しみに!

[リノベガイド実践編] 前編


初心者がリノベーションやDIYにチャレンジしても大丈夫?編集部員のスガ(DIY初心者)がセルフリノベーションをやってみました。前・中・後編でその様子をレポートします。リノベガイドの記事も参考にしつつお楽しみください!

1.勢いで小さなビルを借りる

(左:外観は補強されたためきれい。 / 右:2Fは壁も床もないスケルトン状態。)

はじめまして、みんなでつくろう編集部員のスガです。私はDIY初心者で、小学生くらいの頃おじいちゃんに日曜大工を少し教えてもらった程度です。昨年リノベガイド記事を作成していて、セルフリノベーションやDIYにだんだん興味を持ち、やってみたいと思うようになりました。そんな中、市内の小さなビルがスケルトンの状態で安く賃貸(1棟貸しで6万円/月)で出ていて、勢いで借りることにしました。

神戸市熊内町にある3階建の小さなビル、以前はうつわ屋さんだったとのこと。このエリアは新神戸駅や春日野道駅からも徒歩圏内で、周りには昔ながらの個人商店が点在しています。ただかつての賑わいも今はなく、空き店舗、空き家も増えているエリアです。

(左:床もないので配管がむき出し。 右:簡単な図面を書きました。)

借りた建物は築年数もかなり古く、鉄骨造ではあるものの劣化が激しい状態でした。契約後、想像以上に状態が悪かったらしく、引き渡し前に最低限の補強はしてもらえました。ほぼスケルトンなので好きなように作れるとはいえ、予算も少ないし、ガス水道電気は自分ではできません。わからないことは建築関係の知人・友人にアドバイスをもらうことにしました。

まずは下見に。採寸して簡単な図面も作ってみました。図面を見ながら妄想を膨らませます。1Fは自転車置き場や、ガレージ、作業場のような使い方のイメージ。2、3Fは住居として作る方向に。鉄骨の天井はむき出しの方が雰囲気が出るし、塗装のみで済ませようと考えました。3Fの床もそのまま使う方向で壁だけやり直す事にしました。

2.まずはできることから

(ひたすらケレン作業で塗装が剥がれた部分をきれいに。気が遠くなる作業でした。)

まずは天井の鉄骨が錆びてひどい状態をなんとかしようと思いました。塗装するにもケレン作業でサビを落とす下準備が必要だったので、ひたすらゴシゴシと磨いていきます。天井プラス鉄骨の凹凸はなかなかの重労働。来る日も来る日も地道にゴシゴシ…とにかくボロボロなので終わりが見えない…。5〜6月の作業で、気候はDIYにはよかったのですが精神的にかなりキツイ作業になりました。

3.ガス漏れが見つかる

(ガス配管を専門業者にお願いしました。サクッと完了、早い!)

ケレン作業の毎日は精神的に辛すぎたので、気分転換も兼ねて違う部分も進めていきます。まずはガス配管。個人でガス給湯器を購入し、配管の引き直しを専門業者に依頼することにしました。業者さんに来てもらい、点検してもらったところガス漏れを発見!補修含め対応してもらい、引き直し完了。

4.PAINT IT WHITE

(スプレー缶での塗装にチャレンジ、左から1〜3回塗り。)

ケレン作業も終わり、いよいよ天井の塗装に入ります。特に天井の色にこだわりがなかったのと、迷ったら白!ということでひたすら白く塗っていきます。しかし鉄骨の天井は塗装作業がとにかく大変です。凹凸はもちろん錆びて剥がれている部分も多く、スムーズに作業ができません。そこでスプレー缶での塗装にチャレンジしてみました。作業は楽チンですが1回塗りではキレイに仕上がりません、結局3〜4回は重ね塗りをすることになりました。コスト面を考えると微妙かも、ということで塗りやすい場所はハケで塗装をしました。いろいろな手法が試せるのは楽しいので、本格的な吹き付けのスプレー塗装にもチャレンジしたいです。塗装作業は何より見た目がドンドン変わっていくので楽しい!

天井の塗装は7月あたりからのんびり始めたのですが、あまりの酷暑にDIY作業が休みがちになりました。これが後々、スケジュールを圧迫することになります。

5.砂壁の脅威

(砂壁は塗料を吸ってしまい、なかなかきれいにならない…。)

天井の塗装は細かい部分は除き一段落したので、次は2階の壁を塗装していきます。ここでの厄介者は砂壁でした。塗装方法を専門家に聞いたり、調べたりして、まず砂壁にシーラーを塗って固めたあとに塗装していきました。シーラーで固めた後でも、塗料がどんどん吸い取られます…さらに、シーラーが十分でない場所は乾燥してからボロボロと崩れてしまいました。体力と塗料をたっぷりと持っていかれた砂壁はなかなかの脅威。仕上がりも思っていたようにはいかず、初心者ならでは?の失敗だったように思います。コストはかけられないですがちょっと別の仕上げに変更しようかと考えています。

前編まとめ

(なんとかここまでできました!)

初めてのセルフリノベーション 。ネットで調べたり、リノベガイド読み直したり、専門家に相談したりしながら進めています。楽しい作業もあり、辛い作業もありますが建物にどんどん愛着が湧いてきました。あと、家の構造をちゃんと見ることができ、想像していたよりもシンプルなことを知ることができました。個人的な課題となったのは、仕事の合間や休日にしか作業ができないことです。賃貸物件のため、あまりのんびりとはできません。(2018年3月に契約をし、執筆時点で2019年になりました…。)次回は、床貼りや設備関係の作業に入っていきます。お楽しみに!

人任せにせず、みんなで管理 〜自主管理の秘訣、塩屋の団地事情〜

団地やマンションの『管理』が年々委託管理に移行していく中、垂水区の団地『塩屋住宅』では役員と住民が協力しながら、自主管理をしているという。長く続く自主管理の秘訣を役員の方たちに聞いた。

(右:今年度理事長の浦山さん)

マンションや団地などの集合住宅に住む場合、住人は毎月『管理費』や『修繕積立金』を支払い、『管理組合』が設備のメンテナンスをはじめ、建物の維持管理を行っている。一般的な集合住宅の管理費は2~3万円程度が多い中、塩屋住宅は管理費と修繕積立金を合わせて1.2万円とかなり安い。世帯数も多いので、修繕積立金もかなり貯蓄されている。塩屋住宅の管理費が安い理由は、長く続く「自主管理」という方法で自分たちが主体で管理していることだ。

ただ、多くの集合住宅で自主管理は、管理組合役員の高齢化や、引き継ぎの不在によって年々減ってきている。近年は外部業者への「委託管理」という方式がほとんどだ。委託管理は管理会社が管理運営を行うので、住人の手間を大きく減らすことができる反面、管理費や修繕積立金が上がることになったり、住人が建物の管理状態を把握できなくなるというデメリットもある。

(団地「塩屋住宅」/塩屋駅から徒歩で10分程度登った坂の上に6棟ある。)

そんな中、塩屋住宅の自主管理が長く続いている秘訣はなんだろうか。ポイントはいくつかある。まず、管理組合の役員の数が17名と多い。団地の1列(同じ敷地上の1階から最上階まで)に1名づつという理由だそうだが、これが活発なコミュニケーションを生み、居住者がサポートしあえる関係になったり、住人の状況や補修、メンテンナスのノウハウがたまっていくことにつながる。

(左:塩屋住宅。右:塩屋住宅の一部の住居には海を見下ろすビューがあり、気にいる人も多い。)

例えば、大規模修繕にあたり、「どこの業者がいいのか?」「どういった工法でするのか?」「以前はどのような改装を行ってきたか?」についての情報が蓄積されている。そして、昔から住んでいたり、専門の知識を持つ住人に修繕の相談をしながら進めているとのこと。このエピソードだけでも、管理組合と住民の間で良い関係が築かれているように感じる。昔は多くのマンションや団地も似た感じだったのではないだろうか。

また、めずらしい事例かもしれないが、塩屋住宅の管理組合は自治会と一本化されているということだ。管理組合は主に建物の維持管理を行い、自治会は区域内の課題解決や親睦を深める活動を行う。ほとんどの地域は別々になっていることが多い。
塩屋住宅も昔は別々だったが、塩屋住宅は管理組合の区域と自治会の区域が同じで、それぞれの役員を選出するのが面倒だったということが理由らしい。建物の管理、設備面以外にも、福祉の一環でラジオ体操や登山散歩を行ったり、ゴミ捨て場の管理や清掃といった環境面も管理組合が運営している。ハード面とソフト面が一本化していることは大きなポイントだ。

住民が主体的に管理運営をしている塩屋住宅。今回は役員の中から現理事長、前理事長、管理人の3名に、役員になった経緯や管理運営の内容などのお話を聞くことができた。

「住人が出会えるきっかけづくりをしている」(過去に理事長経験のある櫻井さん)

(左:塩屋団地のDIYマン、櫻井さん)

櫻井さんは数年前に理事長をされていた。11年ほど前に、孫ができたことをきっかけに、塩屋住宅に引っ越しをしてくることになった。坂道はあるが駅からも近く、景色も良い団地がとても気に入ったそう。数年前に櫻井さんが理事長をされ、そのときにはじめたことが今も継続して行われている。ひとつは集会所の駐車場にある共有の図書館である。

(左:共有の図書館。小説から漫画までかなりの数が並んでいた。右:柵の間から猫が入るため、こちらも櫻井さんがDIYして上のように。)

こどものたまり場になっているこの場所で本が共有できたらという思いから始まり、団地の皆さんに認知され、順調に書籍は増えていった。いまでは並べきれないほどの量になっているそうで、新刊も多く団地外からの利用者もあるそう。

(ひまわりカフェのメニューとおしるこ。安い。)

もうひとつは集会所を開放して、ひまわりカフェの運営を2ヶ月に1回はじめた。飲み物(ウィンナーコーヒー、ジュース、しるこ)は100円、デザートは50円と破格で、子どもはさらに半額になる。テーブルにはフリーで食べられるおやつも並ぶ。ご高齢の方や子どもが遊びにこられるそうで、高齢者の方も集まれるいい機会になっているとのこと。近年は、子育て世代の家族の世帯数の流入も多く、子どもも増加傾向にあるそうで、子どもはもちろん、親にとってもありがたい場所だ。もちろん図書館と同様に団地外の利用者もあるそうだ。

櫻井さんも団地内同居の孫がいる。親族が他世帯で同じ団地に住むという形をとっており、同じように孫ができて、団地にもどって子育てを手伝う世帯もいくつかあるそうだ。

櫻井さんは役員をやめた後も、管理組合のサポートを積極的に行っている。
たとえば管理人室の床。管理人さんが来客のときにせまいスペースに難儀していたことから、自ら工具を持って床を施工した・・すごい!

(櫻井さんがDIYで作った、管理人室の床)

「管理を始めてはや20年、塩屋住宅に骨をうずめる覚悟で管理している」(管理人の中浦さん)

(管理人の中浦さん。気さくで明るく、人当たりの良さが溢れていた。)

中浦さんは当初、愛媛の松山から引っ越してきた。塩屋の文化住宅に住んでいたが賃料ももったいなく感じて、手頃な価格で購入できる団地に引っ越しを決めた。前に管理をしていた人が引退されて、引き継ぎをする形で管理人になったそうだ。

日中は管理室に常駐していて、役員の業務が潤滑に行えるように調整を図る。過去どのような管理を行ってきているか把握しているので、他の役員の方も中浦さんのサポートのおかげで、いろんな業務を行えるということを言われていた。もちろん管理人業務の報酬は管理会社ではなく、中浦さんに支払われている。

また、塩屋住宅の住人を家族のように思い、最近会っていない人がいれば積極的に声をかけたりもしている。中浦さんはあくまでサポートに徹しながらも、自身の住む塩屋住宅と住人をとても大切に、愛着を持って管理している。多くは管理会社がやっている業務だが、ここまでできる管理会社はないのではないかと感じた。

最近、中浦さんのところには夕食が届けられるようになったらしい。そんな人格的な魅力が中浦さんにはある。

(2階が集会所、1階に管理人室や共有の図書館がある。)
(中浦さんの職場、管理人室の扉。)

「地域を知るきっかけになるかなという気持ちで引き受けた」(現理事長の浦山さん)

(理事長の浦山さん、先輩の役員の方達にサポートしてもらい助かっていると言う。)

今年度の理事長、浦山さんは徳島県から仕事の都合で関西に移り住んできた。
神戸で不動産屋を回って、最初に見た塩屋住宅が気に入った。その後の不動産見学はキャンセルして、塩屋住宅に住むことに決めたそうだ。

塩屋に住んで1年半ほど経ち、生活にも慣れ始めた頃、役員を決める会合で理事長にならないか?という話が持ち上がった。神戸、また塩屋のことはあまり知識がなかった浦山さんも、地域を知るきっかけになるのではないか、という軽い気持ちで引き受けた。

塩屋住宅の役員は輪番制になっており、若い人が役員をすることも多いため、昔から住んでいる人も役員に入り、若い人のサポートに回るという傾向にある。ここ数年は理事長にも若い世代が任命されており、塩屋住宅の役員は次世代に管理を引き継ぐという流れができているそうだ。

●取材を終えて

地域や集合住宅に住んでいても、自治会や管理組合の役割をいやがる人は多い。生活の負担になったり、役員として努力しても、住民同士のコミュニケーションを望まない人もいるからだ。そのため自主管理は住民の負担も多く、健全な運営を長く続けることが難しい。しかし塩屋住宅の人たちはそれを前向きに取り組み、長く続けている。とてもめずらしく、すごいことだと思う。

今回お話を聞けた三人もそれぞれ魅力を感じる方たちだった。中でも管理人の中浦さんは塩屋住宅には欠かせない存在だ。中浦さんは管理人に徹している。決して表には出てこないが、何か困ったことがあれば、中浦さんからの助言やサポートで解決していく。まるでコミュニティデザインのあり方を体現しているかのようだ。勝手ながら、中浦さんのような人がいる地域は安心した毎日が送れるに違いない。

元理事長の櫻井さんはスーパーDIYおじいちゃんであり、アイデアを出しつつ自ら手を動かして、良い状況を作り出していた。櫻井さんのひまわりカフェなどの活動は広義でのリノベーションと言えるのではないかと思う。

現理事長の浦山さんは塩屋住宅では若い世代に入る。敬遠されがちな管理組合や地域の役員という役割を、地域を知るきっかけと捉えて引き受ける姿勢は見習いたいところである。

そして何よりも根本の所で、自分たちの住む場所、地域に愛着がないとうまくいかないと思う。今回、取材させていただいた3名もみなさんそれぞれに、自分の住む場所やエリアへの愛着があった。またその思いを継いで持ってもらおうと若い世代をサポートすることは、他の地域でも参考になるのではないだろうか。

住人の負担軽減のための委託管理も良いけれど、負担をみんなで助け合う方法がこれからもっと重要になってくるように思う。

※記事内の文章は原文を尊重しています。
(画像:みんなでつくろう編集部)

兵庫区に生まれた、地元六甲の木を循環させる小さなエコシステム

六甲山と兵庫区で始まっているローカルな山の間伐材を流通させる取り組み、最前線取材してきました。既存の仕組みを新しい仕組みとして再編集する、広義でのリノベーション事例です。

(六甲山の間伐材)

全国的に問題となっている人工林の放置。経済面や労働力不足から放置された山は土がやせ、自然災害の原因にもなっている。私たちに身近な六甲山にも同じような現状がある。
六甲山の間伐材利活用に精力的に取り組んでいるSHARE WOODSのヤマサキマサオさん。街の南側には海、背後には六甲の山並みが広がる神戸。その立地を活かし、地元で間伐材を循環させるためにはどうすればよいのか?そう想い活動していく中で、兵庫区で長年続いてきた船大工工房「マルナカ工作所」を継承し、”木を愛する人たちが木と本気で向き合えるコミュニティー”として活用することにした。ヤマサキさんいわく、マルナカ工作所ができたことで、小さな循環の仕組みができ始めたと言う。一体どういうことなのだろうか。マルナカ工作所で話を聞いた。

(左:SHARE WOODS代表のヤマサキ マサオさん 右:マルナカ工作所)

●六甲山の木の現状

(裏六甲で間伐している様子)

神戸市民に馴染みのある六甲山。ただ間伐材の現状のことに詳しい人は少ないのではないだろうか。はじめに六甲山の現状とその背景について伺った。

「まず六甲山には表六甲、裏六甲と二つの面があります。表六甲の木材は主に広葉樹が多く、コナラやシイ、クスノキなど20種類くらいあります。明治後半までは禿げ山だったのですが、造林計画を立て、約3年間かけて300万本くらい植林をした背景があります。裏六甲は民間の方たちが植えたスギ、ヒノキなどの針葉樹がメインになっています。現在はどちらも全国の人工林と同じように手入れがされないまま残っていて、間伐をしなくてはいけない状況です。裏六甲では間伐はしていたのですが、搬出コストが合わず、切り捨てたまま放置されていたことも知りました。」

なぜ切り捨てたままなのか、については「もともと六甲山自体には林業の仕組みがなく、木材を流通させる出口をつくる人がいなかったことがひとつの大きな問題でした。」とのことだった。そして、そういった現状を知ったヤマサキさんは間伐材を流通させる活動を始めていく。

「行政や民間のどちらとも協力しあって、その橋渡しになれるように活動をしています。具体的には間伐材の利活用の提案をしたり、民間の山(裏六甲)では毎年一定量の間伐材を買い続けるといったことになります。こういった活動を始めて約4年目になります。ただ木材を家具や住宅の建材として使うためには、乾燥させたり製材したりと長い時間が必要になることと、ある程度の量がないと循環していきません。そのため、木材のストックや加工、製品にするための二次加工をする場所がだんだん必要になってきました。その中で『マルナカ工作所』を借りることしたのです。」

●兵庫区が持っていた「木を活かす」インフラ

(マルナカ工作所)

マルナカ工作所はもともと兵庫区西出町にあった。ヤマサキさんはこのエリアの持っているポテンシャルに着目した。
「マルナカ工作所のあるエリア(兵庫区西出町)は、船を作る工房や、船の客室の造作家具等の修理工場などがあって、製材の職人もいれば、流通の仕組みを持っている人たちもいました。もともとインフラがあったんです。しかしそういった仕事も年々衰退し、工場自体も閉鎖していっている状況でした。」

(マルナカ工作所のあるエリア、造船関係の会社や工場などが並ぶ。)

「このインフラを六甲山の間伐材の流通や製材・加工に当てはめてみようと考えました。」

(マルナカ工作所も材のストックや加工の場所として機能した。)

「そこで、地元で長く続く製材所の『三栄』さんであったり、建築設計事務所の「ウズラボ」さん、床材に加工できる『小池加工所』さん(兵庫区)といった近所の方々と連携して、ひとつの建築物だったり、内装工事を仕上げる試みを始めました。最初の事例として、同じ兵庫区の『マツモトコーヒー』さんの移転リニューアルをお手伝いしました。」

運河がそばにあるこのエリアには海外から輸入した丸太を製材し、加工をして国内へ流通させていた歴史があり、そうした背景のもとで創業し今まで残っているのが三栄であったり、小池加工所だ。

こうして兵庫区のチームで始まった間伐材利活用のプロジェクト。ヤマサキさんは言う。「海や山に挟まれた神戸の良いところとして、六甲山で間伐した木を製材所まで持っていくのに30分くらいしかかからないんですよ」

(図/六甲山間伐材の循環の事例)

ヤマサキさんは今回のプロジェクト以前から個別には関係をしっかり築いてきた。それがひとつにつながることで、六甲山の間伐材が地元で循環するという、小さなエコシステムをつくりだせるようになったのだ。今、マルナカ工作所を中心にして、兵庫区で地元の木を活かすものづくりのネットワークが築かれつつある。

(マツモトコーヒーの移転リニューアルで店内の一部に六甲山の間伐材が使われている。)
(マルナカ工作所では引き取った建具や材も販売している。)

●より循環させていくために

この循環をより充実させ、広げていくために必要なことは何かについて聞いた。
「地元の企業の方たちに六甲山の木材を使った製品を提案すると喜んでいただけるケースが増えてきました。木材がたくさん使われる利用方法はやはり建築です。現状は構造材よりは内装や外装に使われることが多いのですが、建築関係の人や、DIYをする人たちにも六甲山の木材が選ばれることで、需要が増え、流通も活発になっていけばいいなと思います。
マルナカ工作所では、六甲山材の購入や利用の相談ができます。また、この拠点ができたことで、いろいろなところから使われなくなった木材の再利用の相談をいただくようになりました。閉店してしまった材木屋さんの廃材を引き取って、安く販売することも行っています。
地域の人たちの問題を少しでも解決できれば。関わっている事業者たちは地域に貢献しながら、利益を上げていけたら何より。そんな小規模の経済循環をつくり出したいと考えています。」

とは言え、まず重要なのは六甲山の木材がたくさん使われることです。使われるためには、知ってもらう、選んでもらう選択肢を増やすことが大切と話すヤマサキさん。マルナカ工作所では六甲山の間伐材のことをより知ってもらうためのイベントなども定期的に企画している。

●取材を終えて

もともとは造船業に由来する、兵庫区のものづくりネットワークを、六甲山の木材の加工と流通を活性化させるためのインフラとして活かすことができると考え、少しずつ仕組み化に取り組んでいるヤマサキさん。既存の仕組みを壊すのではなく、新しい仕組みとして再編集することは広義でのリノベーションと言えるのではないでしょうか。また、地元(六甲山)の間伐材を使うことは、結果的に自分たちの住む地域を守り、仕事を創り、つながりも広げることにもつながっていくのだなと感じました。

※記事内の文章は原文を尊重しています。

(画像提供:ヤマサキマサオさん / みんなでつくろう編集部)