みんなでつくろう

つくる人たちでみる

角野 史和

自己紹介をお願いします。

長田区の建築設計事務所「スタヂオ・カタリスト」に勤務しています。妻1人子1人。

どんな活動をしているの?

古民家再生、アートと防災を掛け合わせた空き地再生、商店街の空き店舗調査、景観計画や地域の将来ビジョンを考えるファシリテーションなど、建築設計と住民主体のまちづくり支援に携わっています。
暮らしとともにある建物やまちを愛し、個人でも町中での遊びやアート企画をして、色んな人がそのまちの良さに触れ、親しめるような活動もしています。モットーは「つっかけで会いにいける距離感でとにかく顔をつき合わすんや!」。

どんな建物を改装したの?しているの?

長田区南部の駒ヶ林という路地のまちにある老朽化した空き家です。築130年以上経つ古民家で、現在は近所のおばちゃんたちが集う下町の喫茶店「喫茶初駒」として日々笑い声の絶えない場所になっています。
実は板戸を隔てて私の勤める建築事務所スタヂオ・カタリストが併設されているので、時々爆笑必至の話題が聞こえてきて仕事に集中できないこともあります(笑)。

物件種別 古民家物件概要:延床面積85㎡ ( 喫茶店16㎡ / オフィス54㎡ / 屋根裏部屋15㎡ ) 平屋建て ( 屋根裏部屋あり )、木造
かかった日数 2ヶ月半
お金のこと 改装費300万円

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集いの長屋オフィス

AREA長田区駒ヶ林

長田区南部の駒ヶ林という路地のまちにある老朽化した空き家です。築130年以上経つ古民家で、現在は近所のおばちゃんたちが集う下町の喫茶店「喫茶初駒」として日々笑い声の絶えない場所になっています。

誰とどんな改装をしたの?

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設計前の段階からいろんな人に関わってもらいたいと思い、まずは実測調査から大学の先生や学生、まちづくりプランナーや行政職員などの多く参加で行ないました。その後昔ながらの大工さん1人に棟梁としてついてもらい、改修が始まりました。

解体、漆喰塗り、古色塗装、土間の三和土(たたき)、庭の竹垣づくりなどいろんな人が関わると面白そうな工程は積極的に呼びかけてみんなでワイワイやりました。外人さんや近所の子どもにも参加してもらいました。

お金もそんなにかけられなかったので、事務所の床は杉の足場板を使い、庭の竹垣はむらづくりで交流のある集落の竹をタダで伐らせてもらい、(あちらさんにとっては伐採してもらったほうが助かるみたいです。)店内の欅の無垢カウンターは同じくむらづくりの仕事で交流のある養父市の臼職人さんに譲ってもらいました。

なぜこの場所・この建物だったの?

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「喫茶初駒」は、最初はオフィスとして改装しました。当時からスタヂオ・カタリストは駒ヶ林地区のまちづくり支援を行っていました。そのなかで建物の元の所有者から「空き家で困っている」と相談を受け、所長が買い手などを色々あたりましたが見つからず、実際に支援しているまちの現場で色々考えられることは願ってもないということで、結局会社で買い受けることになりました。

拠点をここに移すと地域内には多くの高齢の一人暮らしの存在がわかりました。所長の考えで、気軽に寄れておしゃべりができる喫茶店を!ということでオープンしたのがはじまりです。
実は、駒ヶ林は木造密集市街地や地図混乱地域という課題を抱えており、道が狭く車が中まで入れなかったり、土地の境界がきちんと定まっていないといった事情が多く、ほとんどの空き家は市場にのりません。しかし、裏を返してみると、お互いの事情が信頼関係の上でうまくマッチングできさえすれば、現在まで残り続けた他にはない昔懐かしい古きよき環境が得られるのだということも分かりました。

楽しかったところは? しんどかったところは?

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改装のプロセスもいろんな人が関わり楽しかったですが、その後の使われ方もとても楽しいです。駆け出しの若手農家が無農薬有機野菜を売りに来たり、農村部の特産品開発のための試食会が行われたり、近所の発明家を名乗るおっちゃんが新しいアイデア商品を見せびらかしに来たり。また、私は新長田の人情あふれる町中を舞台にしたアートプロジェクト「下町芸術祭」の実行委員もしているのですが現代アートの展示の舞台としても活用しました。先に触れたように課題の多い地域ではありますが、人々のくらしの営みがにじみ出ていて、人情や懐かしい路地の雰囲気など、他にはない魅力にあふれています。日常の暮らしとアートプロジェクトなどの非日常がここで結節され、たくさんの人に町の魅力や素晴らしい建物の存在に気づいてもらい移住や空き家活用のきっかけに繋げていければと思っています。

建物で気に入ってるところはどんなところ?

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昔ながらの建物は人に対してオープンだと思います。「土間」のある「喫茶初駒」は、誰でも入ってきやすく本当に地域のたまり場になっています。また、壁材や家具・建具なども古いものを再利用しているので親しみやすい空間になっているんだと思います。あ、そういえば喫茶店の椅子は廃校になった小学校の図工室のものを譲っていただきました。ここでも節約。このような親しみがあって気軽に入れる場があるから人が集まり、さらなる人のつながりを生み出すので、そういったところがほんとにいいなーと思っています。

近くの住人との関係はどう?

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「喫茶初駒」の店長は、実は町内会会長の奥さんにやってもらっています。そのため町内の顔見知りが多く来店し、奥様方の女子会やおっちゃんたちの打ち合わせの場なんかに使ってもらっています。

スタヂオ・カタリストも町内会に入っていますので餅つきや初午祭、防災訓練にも参加しています。たまたま近所の人のお孫さんが帰ってきた時なんかは3世代でワイワイくつろいでいて、お正月の実家の居間ジョータイです(笑)。

オフィスが併設されているのもみんな知ってるので、ちょっとコピーさせて!みたいなことも時々あります。

今後の展開は?

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「喫茶初駒」以外でも、駒ヶ林では空き家を障害者アートのアトリエに改装するといったことも行ないました。そういった経験から市場にのりにくい課題の多い空き家でも、互いの信頼関係で上手くマッチングができれば活用につながることがわかりました。

しかし、「たまたま上手くいった」では今後増え続ける空き家問題に対応していけないということで、スタヂオ・カタリスト所長が代表発起人となって「空き縁ネット」を設立しました。「空き縁ネット」は「地の縁・人の縁」を通じて互いに信頼しあえる人がつながり、空き家・空き地の再生活用を目指す支援ネットワークです。

定期的な交流会を開いたりして空き家・空き地の再生に関心のある所有者と利用希望者の出合いと交流の場をつくって、さらなる空き家再生を目指しています。私としてはそうやって建物が再生され、そこでの暮らしや楽しみが伝わり、私も住みたい楽しみたいという人が増え、といった循環で街が豊かになっていったらいいなって思っています。

参照サイト

スタヂオ・カタリスト(http://www.studiocatalyst.com

空き縁ネット(http://bit.ly/1XkpN25

下町芸術祭(http://www.shinnagata-artcommons.com

※記事内の文章は原文を尊重しています。

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