みんなが諦めてしまうようなボロ廃屋を、気合でDIYで直して自分で住み、その後賃貸するというスタイルの大家さんがいる。現在は兵庫区の物件を改修中と聞き、お話を伺った。

築古物件を次々とレスキューしていく

西村周治さんは普段は不動産仲介業を行っているが、道路条件も良くない廃屋などを条件が合えば購入し自らDIYでリノベーション、住みながら改装して、できあがったら引っ越して賃貸をするということを繰り返すヤドカリのようなライフスタイルをしている。

(西村周治さん)

きっかけは灘区の住居がスタートだったそう。賃貸で借りていた住まいを、DIYで修繕改装をしていたところ、そんなに気に入ってもらえるんだったら、1棟まるごと建物を買ってくれないかということで購入することになった。1階に別の方が賃貸で借りられていたので、自然に大家さんになることができたとのこと。(過去の記事はこちら

(DIYして暮らしていた灘区の住居)
(DIYして暮らしていた灘区の住居)

そこから塩屋の団地、板宿のビル、兵庫区のシェアハウス、塩屋の戸建てと次々にDIYで改装し、賃貸物件として貸し出し、本人は新たな物件に移っていく暮らし方になった。そもそもの物件の選び方を聞いてみると、「基本的に建物がボロければボロいほど萌えます。動物にはスカベンジャーという腐肉食の動物がいますが、僕も不動産界隈のスカベンジャー的な存在です。道路条件が悪いボロい建物で、一般の不動産屋さんが敬遠するような案件ばかりを、漁ってレスキューしています。」とのことだった。いわゆる築古の物件は価格も安いことが多いが、その分立地が不便だったり、修繕にかかるコストが大きい。西村さんは後者をDIYで行うことでコストダウンをしている。そしてバリューアップが成功すると前者のデメリットも改善しやすくなる。

(ボロボロの建物に魅力を感じるという西村さん)
(昔、DIYで作った五右衛門風呂)

こんな築古物件のDIYを繰り返すようになったのは、昔からDIYしながらボロボロの廃屋を賃貸で借り、修繕しながら移り住んできた経験があるからだそう。西村さん曰く、「当時は設計事務所に勤めていて、給料も10万円以下と、とにかくお金がなかった。そこで家賃を安くするために賃料の安い一軒家を改装し、シェアハウスにして一人5000円と驚異的に賃料を安くして生活をしていた。がんばって改装して廃屋も生まれ変わることができれば、なんとなく人が集まってくれるようなイメージがあった。」とのことだった。

住み手に編集権を

西村さんが賃貸で貸し出している物件には特徴がある、それは入居者による改装を基本的にOKしている点だ。前回の平井さんの記事(過去の記事はこちら)でも触れているが、多くの賃貸物件では住人による改装は制限されている。そんな中、「住む人に編集権を任せることが大切。」という西村さん。理由を聞くと、ある程度は改装して気に入ってもらえるような空間には仕立てるが、さらに改装してもらうことも可能にすることにより、より自分の空間にしてもらえたらいいなという思いがあるのだそう。

兵庫区の築古物件を改装中

西村さんが現在改修中の物件は兵庫区平野エリアにある。このエリアはかつての日本家屋が残っていて、細い路地などにも趣を感じるようなエリア。老舗の温泉は地元の人を始めいつも賑わっていて、近頃は移住者も増えているとのこと。西村さんの購入した物件もかつての貿易商の戸建て物件とのことだった。

(平野エリアにある物件を改装中。)
(DIYアシスタントはドイツ人のサイモンとイギリス人のガブリエル。)
(作業が終わると近所の湊山温泉で汗を流す)

改修後の住み手がもう見つかっているとのことで急ピッチで作業を進めている。外国人のお手伝いや、知人友人たちも参加して、空いた時間を作業に当てている。

学生たちの実験場

以前に取材させていただいた物件がある。学生たちと一緒にDIYでリノベーションした元廃ビル(過去の記事はこちら)。西村さんはこちらもシェアハウスとして運営している。最近住人たちの意向で、またイチから作り直しを始めたという。西村さんはこの物件も学生たちに編集権を任せており、彼らの相談に乗りつつ、一緒にDIYをしたりしている。

(DIYで作った内装を取り払ったところ)
(入居者たちがまたイチから作りなおすとのこと)

取材を終えて

古い物件をリノベーションすることやシェアハウスに住むことも一般化し、浸透してきたように思う。これは経済的な側面もさることながら、住み手の住居に対する意識が高くなってきたことや、ライフスタイルの多様化が進んだ結果とも言える。西村さんのように住み手に編集権を与える、といった考え方は、今後ニーズがどんどん高まってくるのではないだろうかと感じた。また、築古の物件は全国的にこれからも増えてくる。新しい使い方が模索されている今、西村さんのような暮らし方も一つの事例としつつ、コストを抑えて複数の物件を所有、活用していく方法がどんどん出て来て欲しいなと思った。

※記事内の文章は原文を尊重しています。